たそがれ映画談義:  予想外の収穫 『マイ・バック・ページ』

『マイ・バック・ページ』が語る                                                                                                                                                         - 本物と紛い物の境界、根拠なきコムプレクスの無効、当事者ではない位置固有の「当事者」性は築き得る…、そのことに無自覚だった主人公。 にも拘らず在り得た誠実 -

帰阪した際、しばしば「ええ映画ある? 行こうか?」と女房にせがまれては出かける(女房の理解では、ぼくの方が「せがんでいる」らしいが)。                                                                                                                                                                                今回は、原作発売時に深く感じ、TV版も欠かさず観て期待していた『八日目の蝉』を観ようか…となって、複数スクリーンのあるシネマへ出かけた。今回は(も)入場料は女房が出した。                                                                                                                                  早めに着いて書店やショッピングで時間を潰すつもりで出かけたが、天与の上映スケジュールの関係で、先にもう一本観れるなぁ~…となって、『マイ・バック・ページ』も観た。『八日目』については原作とTV版の際、あれこれ述べたこともあり、たまたま観て感じ入ったこの作品の方を取上げたい(一日二本は数十年ぶりか…)。                                                                                                                                                                                   その作品が、70年前後を扱った作品にしばしば見受けられる、「過剰な自己肯定」とその逆の「投げやりの全否定」、「空疎な自負」とその逆の「悪意に満ちた揶揄」、のいずれからも「離陸」しようとする誠実な精神を、言い換えると事態と己を相対化・思想化しようとする困難な坂道での営みを、そこに垣間見ることが出来る作品だったからだ。

『マイ・バック・ペ-ジ』(公開中、原作:川本三郎、監督:山下敦弘、脚本:向井康介。出演:妻夫木聡、松山ケンイチ、山内圭哉、あがた森魚)                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                   川本三郎の原作は読んでいないのだが、作品の実歴史:「1971年8月、朝霞駐屯地自衛官殺害事件」「主犯:菊井某のいかがわしさ」「彼のいかがわしい供述から全国指名手配され、潜行を余儀なくされた滝田修氏」について、当時誰もが事件に違和感を持って来たので、その点での興味もあった。滝田修氏に関してはぼくの周りにも強烈なシンパが居たので、何故か近いところの出来事のように思えた。                                                                                                                                                                                    当時、東大出にして「朝日ジャーナル」の新進記者だった川本は、菊井某に度々会い、計画を聞き、独占会見をゲットし、事件後彼から実行犯の証拠たる「警衛腕章」を受け取っており、犯人蔵匿・証拠隠滅で逮捕され、朝日を懲戒解雇された。報道者の課題・誠実・限界…。ぼくは、そこを切開する川本の真摯な営みをこの作品に見ることが出来たように感じている。                                                                                                        【事件のあらましは、ネット検索でいくつか引けるので参照されたい。朝霞自衛官殺害事件、菊井良治、川本三郎、滝田修などのキー・ワードを入力のこと】(例: http://www.alpha-net.ne.jp/users2/knight9/sekieigun.htm など)

                                                                                                                  菊井某の大言壮語・虚言癖・背伸び・ハッタリ・紛い物性は、関係者の証言や事件の概要からほぼ明らかだし、滝田氏関与はこじつけに等しい(後年判決でも謀議は否定された)。                                                                                                                                                 68年・69年が「あること」のピークだとし、71年菊井某は「遅れて来た男」であり、44年生まれで69年には25歳だった川本は「早すぎた男」だとして、そこから来る全共闘「ど真ん中」世代への二通りの「コンプレクス」の奇妙な「親和」関係が、二人を結びつけたのだとの、サブカル学者の言い分は多少当ってもいよう。                                                                                                                                                                                                                                                     けれども、そうした時代の「ど真ん中性」最優先の把握では、当時川本が陥った空回った「誠実」の「落とし穴」からは一歩も出られはしまい。                                                                                                                                                                                                                                                                                                                           そうではなく、人はあらゆる事柄に関して「ど真ん中性」を確保することなど出来はしないという自明に在って、共感の誠実・思想の歴史性・一見傍観者の当事者性とは、その「ど真ん中性」の欠如の中で、どういう回路でいかによく事態に「迫」り得るか?という方法論のことではないのか? 川本が、それを探す真摯な後半生を生きたと信じたい。

この作品は問うている。                                                                                                                                         菊井は客観資料から紛い物だとして、では一体、紛い物ではないとされるあなたや君やぼくが関与したり影響を受けたことどもには、一片の紛い物性もなかったのか? いや、そもそもお前自身が「紛い物」ではないのか?                                                                                                                                                                                                                                         あるいは、当事者ではない者が、そのこと固有の当事者性を獲得する回路は有り得ないのか?                                                                                                                                川本でなくとも、当時の社会情勢、「過激派」情勢、闘う者の実際を識る者ならば、簡単に菊井某の実相を掴めたと思うが、精神的「シンパシー」や「当事者」ではないことへの「後ろめたさ」という甘ちゃんの曖昧軽薄と、スクープをモノしたいという心理に支配されて動いた川本の幼邪心・・・。が彼をを断罪してこと足るのか? と。                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                             自身の側に何も無いとき、人は他者を「かたち」の上でだけ受容れてしまふ。実は、自身の側に何かを築き得たとき、受容れ難い論説・行動・対象であっても、その他者を「理解」はできるはずなのだ。その緊張に耐えられないとき、人は「受容れた」「ふり」をしてその場を切り抜けたりする。                                                                                                                                                                                                                        顧みれば、仕事・交友・男女・闘争・…、多くの場面でそうして生きてしまった。                                                                                                                                                                        ぼくならぼくがそう自身に問い返すように迫ることを、自身の「慙愧」の記憶から語ったのだろうこの作品を、ぼくは認めたい。

ラストで、妻夫木聡が演じた川本(作中名:沢田)が、かつて一ヶ月間同道して取材したチンピラに彼が営む焼き鳥屋で再会するシーンがある。「潜入」ルポを書いたのだ。                                                                                                                                                       その取材も、根無し草チンピラを装い、もちろん「当事者」ではなく取材したのだ。妻夫木がチンピラの焼き鳥屋としての実「生活」を前に嗚咽するのだ。一級のシーンだ。 『悪人』から本作への転移、妻夫木は当代若手第一級の役者だと思う。

                                                                                                                                                                        ぼくらは、この先も自身に即した当事者性の中を生き、他者への想像力と共感を維持する「方法論」を通して、事態と歴史に関わろう。                                                                                                                     違う当事者になるという無理を生きることはないのだ。その無理こそが、ぼくらが嫌ったはずの保身に基づく「解かったふり」の連鎖となり、根っからの傍観として成育するのだ。

歌「100語検索」 24、 <帰>

「帰」には、「そのまま」では大衆的ナショナリズムに直結する思考・生活観や、日本的(と言われる)抒情に包まれてしまう情感・依存・愛憎が入り込んで潜んでいて、ときにいかがわしい。                                                                                                                          「帰」を拒絶して立ちたい気概も、「帰」の対象たる、家族・地域・郷・職場・属した組織・旧知の友・恋しい人・想い出の品々・他・・・・を「根こそぎ」喪った者たちの前で、その未熟に思い至るときがある。                                                                                                                         けれども、『帰』を無条件に肯定して来たメッセージ群との距離は保っていたい、と思う。そしてその上で、                                                                                                   『帰』が自身の存在根拠と不可分であるような切実さの中を生きる者たちへの、                                                                                                         想像力と共感を確保していたい、と強く思う。  

『イムジン河』 http://www.youtube.com/watch?v=GOFFjpyVmvI キム・ヨンジャ                                                                                                                『帰りたい帰れない』 http://www.youtube.com/watch?v=t0E-IiAyxF4 河島英五+加藤登紀子                                                                                                                                    『夕焼け雲』  http://www.youtube.com/watch?v=H_UDfi87VZs&feature=related 千昌夫                                                                                                                                                                                                                                                               『あの日に帰りたい』 http://www.youtube.com/watch?v=RYsojjIPDNI  荒井由美                                                                                                                                     『帰らざる日々』 http://www.youtube.com/watch?v=TtF2trMjYbc 谷村新司                                                                                                                                             『異国の丘』 http://www.youtube.com/watch?v=9hkoI_r3MLM 竹山逸郎                                                                                                               『帰って来いよ』 http://www.youtube.com/watch?v=RdD02K5yLx0 松村和子                                                                                                                                『霧笛が俺を呼んでいる』 http://www.youtube.com/watch?v=w2sb7NsrHP8 赤木圭一郎                                                                                                                                                            『帰り道は遠かった』 http://www.youtube.com/watch?v=Bj7LtYdYLs0 チコとビーグルス                                                                                                                                                『釜山港へ帰れ』 http://www.youtube.com/watch?v=XzELRZn7XWk チョー・ヨンピル                                                                                                                     『上海帰りのリル』 http://www.youtube.com/watch?v=SadtePdrHdc 津村謙                                                                                                                                                 『星屑の町』 http://www.youtube.com/watch?v=-tfGo6IQlxA 三橋美智也                                                                                                                                                『帰ろかな』 http://www.youtube.com/watch?v=HRycui8evD8 北嶋三郎                                                                                                                                            『大阪で生まれた女』 http://www.youtube.com/watch?v=23P2mtFT7oQ BORO                                                                                                                                                                 『北帰行』 http://www.youtube.com/watch?v=GgrvBKEo91I 小林旭                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                『津軽海峡冬景色』 http://www.youtube.com/watch?v=nUNRVbMdsfw 石川さゆり                                                                                                                                                                                              『ひとり上手』 http://www.youtube.com/watch?v=gsovKO3VIRM 中島みゆき                                                                                                                                                             『遍路』 http://www.youtube.com/watch?v=2s2eqxenP6k 中島みゆき                                                                                                                                       『あぶな坂』 http://www.youtube.com/watch?v=Q-O9f574ZiU 中島みゆき                                                                                                                『海よ』 http://www.youtube.com/watch?v=K-aNZYaDUxE 中島みゆき                                                                                                                                    『ホームにて』 http://www.youtube.com/watch?v=43k1GHDhtdY 中島みゆき

歌「100語検索」 23、 <走>

なるほど・・・。「走」は「歩」とセットですね。

『ホームにて』 http://www.youtube.com/watch?v=43k1GHDhtdY 中島みゆき                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 『TRAIN TRAIN』 http://www.youtube.com/watch?v=2KIIFYkc4mQ&feature=fvwrel ザ・ブルー・ハーツ                                                                                                                                                『Hold Your Last Chance 』 http://www.youtube.com/watch?v=OlRcRp_o8DM&feature=related 長淵剛                                                                                                                                                                                                                                                                     『走れコータロー』 http://www.youtube.com/watch?v=rtXyggWHNpI ソルティー・シュガー                                                                                                                       『プレイバックPart2』 http://www.youtube.com/watch?v=zc7zCbyY8pM 山口百恵                                                                                                                                                    『Runner』 http://www.youtube.com/watch?v=QwANpSJodOE 爆風スランプ                                                                                                                                                                            『青い珊瑚礁』 http://www.youtube.com/watch?v=X0EOzrrjPQk 松田聖子                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                      『十七才』 http://www.youtube.com/watch?v=SRWQKfoemiE 南沙織                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                              『この空を飛べたら』 http://www.youtube.com/watch?v=6n_zDrnF–s 中島みゆき・加藤登紀子 

                                                                                                                                                                                                        

歌「100語検索」  22、 <歩>

                                                                                                  『生活の柄』 http://www.youtube.com/watch?v=XcUhACXKx7g&feature=related 高田渡                                                                                                                                                                             『ブルー・ライト・ヨコハマ』 http://www.youtube.com/watch?v=XUAq18FQ3is 石田あゆみ                                                                                                                        『雨に唄えば』 http://www.youtube.com/watch?v=e23o2mnd_eI                                                                                                                                                                      『三百六十五歩のマーチ 』http://www.youtube.com/watch?v=ELwWJH5iFyc 水前寺清子                                                                                                  『大阪の灯』 http://www.youtube.com/watch?v=qC8ShPLZ4dA 春日八郎                                                                                                                                                                                『たそがれの御堂筋』 http://www.youtube.com/watch?v=gwb1qEru5HQ 坂本スミ子                                                                                                                         『勇気あるもの』 http://www.youtube.com/watch?v=_XYDOoOj63U 吉永小百合                                                                                                                              『雨の御堂筋』 http://www.youtube.com/watch?v=sD0bn38bzVA 欧陽菲菲                                                                                                                          『雨に濡れた慕情』 http://www.youtube.com/watch?v=opQo-IXUWFQ ちあきなおみ                                                                                                         『東京流れ者』 http://www.youtube.com/watch?v=GClJ7-5tWfA 渡哲也                                                                                                                           『川の流れのように』 http://www.youtube.com/watch?v=3wmIrAFKLs0 美空ひばり                                                                                                                         『涙をふいて』 http://www.youtube.com/watch?v=lpM4AutWpF4 三好鉄生                                                                                    『夢をあきらめないで』 http://www.youtube.com/watch?v=PW_kP5uwp7A 岡村孝子                                                                                                                                                                                                                                                                                                     『アキラのズンドコ節』 http://www.youtube.com/watch?v=MPrC54P_5-o 小林旭                                                                                             『別れの朝』 http://www.youtube.com/watch?v=tVzCO-dHOQQ 高橋真梨子                                                                                             『私は泣いています』 http://www.youtube.com/watch?v=0pQ3GJ2AAsw リリィ                                                                                                     『上を向いて歩こう』 http://www.youtube.com/watch?v=E5Zmh_6Ngto 坂本九                                                                                                                         『黄昏のビギン』 http://www.youtube.com/watch?v=UWos670AVHA 水原弘                                                                                           『グッド・バイ・マイ・ラブ』 http://www.youtube.com/watch?v=so1U_f6QUsE アン・ルイス                                                                    『時代』 http://www.youtube.com/watch?v=D11Bs_7G1rY 中島みゆき 

 

噛み締めて歩いたことがない                                                                                                  そんなことだからキチンと走れないのだ

 

交遊通信録: 品川宿急襲の女たち

女史三名(様)の 品川宿急襲に遭う

 月が変わって五月。一日、さっそく同世代元気バアさん(本人たちは姉さんのつもり)三名の急襲を受けた。                                                                                                                                                                       某生協の機関紙の敏腕記者(取材・撮影・簡潔にしてツボを外さない文章)の女性、その生協の理事で今春勤務先を定年退職したという女性、この二人は古い友人。もう一人は、天然酵母のパン製造・販売を夫と共に27年にも亘り続けている強者(?)女性。                                                                                                                                    何事かと訊けば、同日 福島であった『福島の子どもたちを放射能から守るための集会』(於:ホリスティカかまた。13:00~17:00)の帰りだという。                                                                                                                      翌日(5/2)の文部科学省・厚生労働省との交渉『子ども年間20ミリ・シーベルト基準の撤回を求める政府交渉』にも参加するので、「今夜泊めろよ!」という次第。当事務所の三階には雑魚寝なら4~5人は泊れるので、もちろん快く承知した。                                                                                                                              品川宿『たそがれ自由塾』近くの「美味い」創作料理居酒屋に案内し、痛飲となった次第。                                                                        当塾近辺の街並みや、旧東海道の趣を残す雰囲気がすっかり「お気に召された」三人は、それぞれぼくの3倍量以上の酒と料理を、美味い美味いと楽しみつつ、福島の報告をしてくれた。                                                                                                        翌日、文部科学省・厚生労働省との交渉についても、帰路、新幹線東京駅へ見送って小一時間報告を聞いた。楽しくも心強いご「一行様」だった。再訪歓迎といったところか・・・。

男と女が、それぞれの関わりの世界(勤務先・得意先・近所・友人知人・他)へ、この情報の発信から『脱原発』へ向かう声を広げるべき事態だと痛感する。緊急には、福島での「子ども年20ミリ・シーベルト基準」の撤回へと進むよう強く思うところだ。                                                                                                                                                              もし、地域や男女によって事態への受け止めに「温度差」なるものがあるのなら(実際あるのだが)、それは大きな錯誤だ。                                                                                                                             例えば、東京は福島~茨城~首都圏と地続きで、事態の推移によっては「現地」となり、千葉県北部などは200km圏内ですでに「現地」だし、何よりも全国に原発があり、地震・津波は地域・場所を問わず「潜在危機」として云わば「公平」に全国を覆っている。それは、男女に関係の無い事柄なのだ。

以下は彼女らの報告

【福島集会】                                                                                                                                原発震災復興・福島会議、福島老朽原発を間考える会 共催。                                                                県内外から250人参加。

 本来の国の」基準は年1ミリシーベルト。(これとて、ICRPが10万人に5.5人ガン死とする数値)                                                                                                 年20ミリシーベルトなる基準は、原発労働者が白血病を発症し労災認定を受ける線量に匹敵し、ドイツでは原発労働者に適用される最大線量に相当する。子どもは地表に近く、土を触り土埃を吸い、土に塗れて生きている。かつ、成長期の胎児・乳児・幼児・学童・生徒には被ばくの影響は、大人の10倍以上とも言われている。                                                                                                             長崎体験を振りかざして福島県の顧問(福島県放射線健康リスク管理アドバイザー)に居座る長崎大学の山下氏は「100ミリでも大丈夫」と公言して県内の「世論」形成に多大な影響を発揮した。                                                                                                                                                                                    その数字の実態とは、100万児童のうち5万人はガン死しなさい、という数字である。と言うのは、ICRP(国際放射線防護委員会)が言う、「年100ミリシーベルトで200人に一人がガン死」という甘い(ICRPは実態より10倍甘いと言われている)想定を採用しても、10倍なら20人に一人、つまり子ども100万人で5万人ガン死となる。                                                                              年20ミリという基準は、何としても撤回させなければならない。                                                        集会は、まず「地域別」に集まり意見を出し合い、さらにそこでの論議を基にシャッフルして「避難・疎開」「除染・放射能防護・測定」「知識・情報を広げる」「基礎知識学習」の4チームに分かれ議論を詰める・・・という工夫がなされていて、実に充実した集いだった。                                                                                                                                                             党や労組には無いスタイルだった。それぞれの「ホーム」「土俵」に持ち帰り、全国にこの動きが広がることだろう・・・。                                                                                                                     まずは、翌日文部科学省・厚生労働省に対し、「子ども年20ミリシーベルト」基準の撤回を求める要請を行なうことを決めた。

【文科省・厚労省交渉】                                                                                                                                                                                                                       参議院議員会館:講堂350名参加。                                                                                                       年20ミリ基準(毎時、3.8マイクロシーベルト)は、そもそも労働基準法で18歳未満の作業を禁止している「放射線管理区域」(毎時、0.6マイクロシ-ベルト)の6倍以上の線量。                                                                                        国内外の1074団体が撤回を求めている。                                                                                                                    「安全委員会」の20ミリ基準の決定プロセスを問う。                                                                                        4月19日の決定は、「その場に居る委員でまず論議した」「不在の委員に電話で諮り、最終的に『差し支えない』との見解をまとめた」「正式な委員会は開かなかった」「議事録は無い」(5月1日、朝日新聞)                                                                                                              「管理区域」は作業禁止域ですね、同じ20ミリシーベルト基準は「管理区域」と同等ではないのか? に対して「校庭は労働現場ではない」などという「人を食った」答弁まで飛び出した。                                                                                                                                                                                                                                                                                      そして誰も居なくなった(?)・・・。交渉の中で、同席した「安全委員会」事務方は「安全委員会として、20ミリシーベルトでよしとは誰も言っていない」なる発言が飛び出す始末。                                                                                                          交渉には、福島現地から、国が「安全だ」とする(毎時、3.8マイクロ以下だった小学校校庭など場所)から採取した土壌が持ち込まれ、官僚に「あなた! それを舐めなさいよ?」との声が上がって、官僚は顔面蒼白。当然だ!

=確認事項= 

 5月6日までに、<文科省>安全委員会の判断について、見解を示すこと。放射線管理区域と同レベルの汚染で子どもが遊ぶことについて、見解を明らかにし、文書で回答すること                                                                                                                                                                                                                                                 同日までに、<原子力安全委員会>決定過程にかかわった専門家で、20ミリシーベルトが安全とした専門家はいなかったことを公に表明すること。                                                                                                                                                         <原子力安全委員会>福島県のアドバイザーの山下俊一氏が、「100ミリシーベルトまで安全」とふれまわっていることに関して、原子力安全委員会は、事実を調査し、これが事実であるならば、指導すると述べた。これについては、即刻結果を明らかにすること。

【参考資料】

☆ 5月2日交渉詳細                                                                                                                           http://www.jca.apc.org/mihama/fukushima/negposq_20110502.htm                               

☆ 田中優氏講演会:『原発・放射能を正しく知るために』 USTREAM 5月2日配信                                                                                                       http://www.ustream.tv/recorded/14428383

☆ 福島県放射線健康リスク管理アドバイザー山下俊一氏の見解など                                                        http://kiikochan.blog136.fc2.com/blog-entry-254.html

新幹線東京駅へ彼女たちを見送った。よく学び、私利でも押付けでもない邪心なき行動・どこかからの指示や誘導ではなく自らの内から湧き上がる自分の言葉、その言動に、思わず声をかけた。「あんたら、ええ女になったなぁ~」と。                                                                                                 もちろん「あなた、ええ男になったなぁ~」と返って来はしなかった。チャンチャン♪~~~

九条改憲阻止と沖縄米軍基地撤去に自分なりのスタンスで与する・脱原発へは私利やしがらみと切れて起つ・・・・、これは我が世代の責務ではないだろうか?

歌「100語検索」  21、 <季節>

季節。

これまで 当「100語検索」に登場したのは、                                                                                                1~10: 川、空、夜、時、遠、時-2、砂、雨、風、港。  11~20: 夢、人生、道、手紙、愛、愛-2、忘、恋、別、友。 でした。                                                                         さて、本日のお題は、<季節>。                                                                                                                                                                                                                                      四月が終わります。桜は、関西でも東京でもとうに散りました。けれど、東北では今満開のところさえあるのです。

お前が歓喜に咽んだ日、                                                                                                                お前が再び起ち上がれないほど打ちのめされた日、                                                                                                                                お前が全てを失い総てを手にした日、                                                                                                        お前が身に憎しみを刻んだ日、お前が赦す心を知った日、                                                                     お前が初めて心から人に感謝できた日、                                                                                              それがぜんぶ お前の季節だ。

                                                                                                        

*********************************************

今次震災が、その人間の、人々の、それぞれに固有の、季節を奪い去った。                                                              東北の被災地に再び人々の季節が降り注ぐことを祈ります。

『かもめが翔んだ日』 http://www.youtube.com/watch?v=oCZCfba2JdA 渡辺真知子                                                                                                                    『季節の中で』 http://www.youtube.com/watch?v=ua4UWwHicvA&feature=related 松山千春                                                                                                                    『冬を待つ季節』 -削除されてありません。-中島みゆき                                                                                                                          『太陽がくれた季節』 http://www.youtube.com/watch?v=ngHEXM3fFD0 青い三角定規                                                                                                             『恋の季節』 http://www.youtube.com/watch?v=gnNECvqGiV4 ピンキーとキラーズ                                                                                    『美・サイレント』http://www.youtube.com/watch?v=Jx4sYDN1tn4 山口百恵                                                                                        『ロード~第二章』 http://www.youtube.com/watch?v=UIh6Wpx4kOk 虎舞竜                                                                             『春なのに』 http://www.youtube.com/watch?v=_REdla-_YHg 中島みゆき                                                                                                 『都会に雨が降る頃』 http://www.youtube.com/watch?v=m8uFlaz5u0E 浅川マキ                                                                            『面影橋から』 http://www.youtube.com/watch?v=yYFZvwHiiBQ&feature=related 及川恒平                                                                                                                  『なごり雪』 http://www.youtube.com/watch?v=5FkYswllnLc 伊勢正三                                                                                                   『君のひとみは10000ボルト』 http://www.youtube.com/watch?v=O7y4-G6bywc 山口百恵+アリス                                                                                                                                                            『哀愁のカサブランカ』 http://www.youtube.com/watch?v=IHM2145in1o&feature=related 郷ひろみ                                                                                                                                                                     『春夏秋冬』 http://www.youtube.com/watch?v=ckhTGPx8QHE 泉谷しげる

連載 54: 『じねん 傘寿の祭り』  五、 キムパ (10)

五、キムパ⑩

 高速艇の喧しいエンジン音で、他の乗客には聞こえないと踏んだのか、黒川が耳元に大きな声で語りかけて来た。                                                                                                             渡嘉久志の海は美しかったねえ。君も、渡嘉敷島と座間味島での集団自決と呼ばれている強制集団死を知っているよね。慶良間の海は憶えていてもあんなに美しく黙っている。本島にもあったんだが・・・。同じ慶良間諸島でも日本軍が駐留していない島では起きていない。かなり以前、有名な女性作家が軍による強制と言うのは疑わしいという本を出したのも知っているよね。軍の命令があった無かった、名指しされた軍人が命令を発した事実ありや無しやで、証言などをかき集めて言い合っている。                                                                                                                    「ええ、聞きかじってはいます」                                                                                                                    ぼくら海軍少年航空兵の生き残りに言わせれば、その双方の証言よりも、軍命令はなかったと言いたい人々の目的や、その女性作家の心情が気になるね。崇高な尊厳ある殉死だと言っているそうじゃないか。ローマ軍に包囲されたユダヤの城砦の軍民の殉死自決の故事を、度々賛美してるんだってね。沖縄の集団死は軍人じゃないんだ、女性作家は島民に崇高な殉死と言う自分の美学を代行させたいのかね。。                                                                                                                  捕虜になれば惨い目に合わされると教え、お国の為に死ぬのだと教え、民間人が軍の手榴弾を何らかの方法で手に入れる。極限状態で兵士が命令やそれに準ずる発言をするのはよく解かる。ぼくは、十七歳でもちろん志願して少年航空兵になったんだ。兵の心情も、長崎で悲惨な死を遂げた人々の無念もよく理解しているつもりだ。甘いロマンじゃないんだ。終戦時女学生だったその作家の出来なかった殉死を被せる相手は、自分自身か日本軍にしなさいって言いたい。                                                                                                      もっともぼくに言わせりゃ、君らの世代の左翼にも、自分たちがヤマトで果たせない想いを沖縄に代行さようというような心理がないかねと・・・。沖縄へ来たときに言うことすることを、自分の土俵でヤマトでしているのならいいんだが・・・。いずれにしても、沖縄に被せるのは支配者根性だよ。                                                                               ぼくは、彼女より五歳年長だがもう少しは視て来たぞ。ぼくの遺言だと思って聞きなさい。                                                                                                               敗戦直後の先輩らの行動、徹底抗戦を叫んで決起しようとしていた先輩を目の前で見ているんだ。呼びかけに応じて厚木だか岩国だかへ向かうと息巻いていた。ぼくは、長崎が壊滅と聞いていたので、すぐ故郷へ向かったがね・・・。黒川はフェリーが泊に着くまで語り続けた。                                                                                                                                                      タロウの話、千利休の話、正否はともかく倭国誇大史、もうひとつ戦争観、これはまともと言うかしっかりしていて揺らぐことなく明晰だ。奇妙なジジイだ。

オバサンの食堂で食事しているユウくんを迎えに行き、オバサンにキムパを二本差し上げ、三人で手を繋いで坂道を歩いた。                                                                                                                                        「ひろし、お前の言う通りだったよ。あのお姉さんは沖縄に居たよ。渡嘉敷島に居たよ。仕事で豊見城を通ったらしい。園の近くで見たと言ってたのに信じなかったチチが悪い。許してくれ」                                                                                                                              「いいって、いいって。許してあげるよ。あの姉さんの名前は何だったかな」                                                                                  「アキさん」                                                                                                                                                                         「ふ~ん、アキさん・・・か。ぼくは園にユキちゃんという友達がいるよ。北嶋さんはアキさんが好きだから、アキさんが居てよかったね」                                                                                                                             恋している者にだけ、見える世界があるのだ。                                                                                                                                                 「そうやな」と笑って返すと、黒川が「そうら!それが本音だろ。放っておくと大空に取られるぞ」と煽った。                                                                                                                    ユウくんが、今そのユキちゃんが大切なのだと言うことも、行き帰りのバスでいっしょなのだということも想像出来た。たぶん、それで間違いないだろう。俺には今、それが見えるのだ。                                                                                                                                                                                                                                                                                                                            その夜、裕一郎は少年のような夢を見た。亜希が工房のキッチンでキムパを作っている。港で後ろ姿のエプロンの隙間に垣間見た、焼きついている肌が拡大して浮ぶ。女性の人格や抱える世界への共感と、性的な欲望の境目が、六十を前にしてまだ解からない。                                                                                          ガキのようだな・・・と平静に客観的に己を見つめようと思いながら、眼が覚めても夢は着いて来た。裕一郎はふと、その姿が話に聞いた亜希の母親のようだと思う。すると、久しく会っていない妻のような気がして来るのだった。そう、裕一郎の妻はよく、仲間から教えてもらったと言うチヂミを作ったのだ。

(五章 キムパ 終。 次回より 六章 ゴーヤ弁当 )

通信録: 孫正義氏記者会見  企業家の公理への可能性

孫正義氏に見る経営者・企業家の社会的役割の可能性。 

-彼の覚悟には、原発に物言わぬ**労働組合を万余重ねても届きはしない-

古い女友達がソフトバンクの主宰者、孫正義氏の自由報道会議主催になる「覚悟」の記者会見映像を送って来た。

 http://www.ustream.tv/recorded/14195781  【是非とも開いて、見て欲しい!】 

約90分と少々長いのだが、時間を忘れてジックリと見聞き出来た。原発の何たるかを説いている。                                                  かつ、エネルギー政策に関する代替案を提言している。                                                                                                                         発言の骨子は、次の通り。                                                                                                                                     そもそも福島はIAEAからも指摘されていた「老朽」原発。                                                                                                                      世界の廃炉年限は平均22年。                                                                                                                               世界の原発建設ラッシュは終っている。原発依存度は減少している。                                                                                                                                 日本だけが、なおも作り続けようとしている。                                                                                                                                                                                                            30年で総点検、その結果により「さらに10年OK」なる国内基準の、10年と言う長期の根拠を問う! 中性子を浴び続けた格納容器の鋼鈑は20年ではモロくなっており、30年は耐用年数限界。福島は40年。                                                                                                                                             原子力がコスト安という神話は事実か? 誰が、どの積算で言っているのか? 事故対応コスト、安全対策コスト、廃炉費用は含まれているか?                                                                                                                                太陽光発電のコストが、2010年の次点ですでに逆転して原子力より安くなったことをご存知か?                                                                                                                                       誰が、何故、原子力が安いと「言い続け」て来たか。電力会社の「私利」が、何故「政・財・官・学・報道・労」をまとめられたのか? 電事連に飲み込まれた自民党、電気労連・連合影響下の民主党という構造的「翼賛」が原発異論を封じ込めて来たのではないか?                                                                                                                                                                                      太陽光・地熱・風力・潮力・太陽熱・・・あらゆる可能性への研究・開発が、原子力偏重・資金集中で阻害去れて来たのではないか? 現に、スタート時にせっかく世界トップファイブに4社も入っていた、日本のソーラーパネルメーカーが、今やトップテンにシャープ1社だ。誰かが妨害している、誰だ?                                                                                                                      原発を、今一気に全廃出来ないとしても、新たには作らない・54基をひとつひとつ廃炉にして行き、急いで代替エネルギー開発に集中するべき。                                                                                                                                  「自然エネルギー財団」を設立する。                                                                                                                           東北に、復興・雇用機会創出も込めて「東日本ソーラー・ベルト構想」を実現すべし。                                                                                                                                                                             我々は原発情報のウソ(安全、コスト安・他)に「洗脳」されて来た。だが、実際を知ったのだ。知った以上、何もしないのは、子・孫・この国への背信行為だと思う。妨害・バッシングは覚悟している。企業家の責務を痛感するのだ。 エネルギー政策の転換への覚悟 を政治の求め、そのことへのいささかの不自由・一時通過する価格高の甘受を人々に求めたい。                                                                                                                                           以上。

戦後、例えばホンダの本田宗一郎、ソニーの盛田昭夫・井深大、リコーの市村清など、私企業の私利を超えて、いわば公理・道理に生きた企業創業者がいた。政治家にも石橋湛山や宇都宮徳馬、司法には砂川裁判の伊達裁判官など、この国の、一面では公理・道理を「思想」「政治的立場」を超えて実践した人物がいた。                                                                                                                                                                                                                   今、原発「戦後」ではなく「戦中」だが、この戦争に巨大企業グループと自身の命運をも賭けて発言・行動する孫正義氏に、戦後の公理・道理に生きた創業者を見る思いだ。

私事ながら、義父(妻の父:故人)は、山陰の小都市で小さな企業(衣料商社)の番頭で、もちろん左翼ではないのだが、新事業を起業(商社機能だけでは先行き危ういと、生産工場を提案・準備・実施に奔走して立ち上げる。街から離れた郡部過疎村に雇用の場を創出した一面もあった。当時その地には珍しい工場内保育所もあった)したり影の経営者役・参謀役に徹した人生を終えた。没後、義父が創設した生産工場は、残念なことに受注先=メーカーに乗っ取られることになる。                                                                        七〇年当時、娘と結婚すると挨拶にやって来た「過激派(?)」の最後尾のそのまたオッカケ程度の軽挙妄動の公判中の若造に、不満と不安を隠してこう言った。                                                                                                                         「ヤスマロ君、左翼でもなんでもいいのだ。ただ『こころざし』のない者はいただけない。志があればこの世でことを成せるかどうかに拘わらず、人生を全うできる。要は志だ」と。若き日の戦後の物資乏しき混乱期に、賀川豊彦の鞄持ちをしていたという義父の個人史を、没後数年の後に知った。                                                                                                            義父の言葉を思い出させる孫正義氏の会見だった。  ちなみに義父の名は【正宜】で、字は違うが「マサヨシ」であった。

連載 53: 『じねん 傘寿の祭り』  五、 キムパ (9)

五、キムパ⑨

「亜希さん、いいかね、ぼくのギャラリーのオープンは見届けるんですよ。配達で近くへ来たらうちに立ち寄りなさい。歓迎するよ。裕一郎君とも積もる話をしなさい。ひろしにも会ってやってくれたまえ」                                                                                                        「別に積もってませんよ。そうだ、忘れるところでした。これ、ユウくんに」                                                                                                                                                                                                                                             亜希はポリ容器に入れたキムパを差し出した。深底容器に入ったスープも付いている。                                                                                                                                           「車を運転しているところを私だと分かるってスゴイ、感激です。近いうちに行くからねとお伝え下さい」                                                                                                                                                                裕一郎は桟橋へ歩きながら訊いてみた。                                                                                                                           「松下さん、この先もここに居るの?」                                                                                                                     「ふらりとこの島に来て、唐突にあそこに入ったんですよ。この連休と夏は越えないことには悪いと思ってます」                                                                                                                                                    「今も前職に戻りたいと?・・・」                                                                                                                                                                                    「安くて良いものだと評判の日本の衣料品直売メーカーが、私が関わっていた国で縫製工場を間もなく大規模に稼動させると、元同僚から聞きました。タイ・ヴェトナム・インドネシアなどから、とうとう最貧国と言われたあの国にシフトです。賃金コストが安上がりなんでしょ。都市部では、旧来の「海外協力」では通用しない現実が始まっています。そこへ「日本的」生産方式が入って行くことに、少年少女のあの澄んだ瞳を思い浮かべて、あそこだけは昔見たあの国でずっと居て欲しいというのは傲慢だとも思います。下手をすれば、第三世界は第三世界のままでいなさい、と言っている様なことですし。発展し、豊かになり、女性は<家>や家事労働から解放されるべきだと思います。先進国並に豊かになる権利は等しくあるはずです。こう言うとグローバリズム推進派みたいに聞こえるでしょ? それと反対のことを言ってるんですけど・・・」                                                                                                                                                 「ぼくもそう思う。グローバリズムこそが、永遠の第三世界を必要としている」                                                                                                            「あの国では、いや日本もですけど、結局は労働問題だと思います。日本の生産工場自体か、そうでなくてもその下請の素材工場では女工哀史だと思います」                                                                                                                                                        「大空さんは、どう言ってるの?」                                                                                                                                    「えっ、何が?」                                                                                                                                         「いや、夏以降に去るだろうという君の方針」                                                                                                                                                                    「卸し用の品物を充分作ってくれたし、うちのことは気にしなくていいとは言ってくれてますけど」                                                                                                  聞き耳を立てていたに違いない黒川が後ろから茶化した。                                                                                           「亜希さん、ずっと沖縄に居たらいいよ。そうだ、大空と結婚しちゃえよ」                                                                                                          亜希が振り返って返した。                                                                                                                                                                     「黒川さん、何処に居るのか、結婚するかしないか、それが一番の問題なのではない、というのが黒川じねん八十年の結論じゃないんですか? すみません、大先輩に失礼なこと言いました」                                                                                     「いいんだよ。その通りだ」                                                                                                                                 「結婚。祖母・母、周りの先輩・・・、うーん結婚かあ・・・」                                                                                                                       「ガハハハ、君はシャープだねえ。さすが裕一郎君が沖縄まで追い掛けてきた女性だ」                                                                                                         「違いますって」二人が同時に言った。                                                                                                           桟橋の改札が見えて来た。「今日は私が見送りですね」と亜希が微笑んだ。秋の終電の改札口で酔った亜希が冗談で言ったセリフが蘇える。「北嶋さんにしといたらよかった」・・・。                                                                                                        作業着に作業エプロンのままの亜希が眩しい。                                                                                                                                                    「松下さん、会社の部下たち宛に出した絵葉書見せてもろうたよ」                                                                                                               「ええーっ、困るなあ。あれは辞めてすぐの時期の弾みです」                                                                                                                        「なら、現在の心境をまた違う歌からパロって聞かせてや」                                                                                               「出来ませんよ、感情と精神が突っ込んでないと・・・。今は、あの替歌のところで立ち止まっているけど冷静な凪状態というか、私にはけっこうジンワリと味わい深い日々ですよ」                                                                                                                                                                                                                             出航まで数分あったのだが、改札の手前でじゃあここでと言って、亜希は車へ戻って行った。                                                                                   「黒川さんの家に遊びに来いよ」と背中に声を掛けた。亜希は振り返らずに手を振っていた。裕一郎は、決して予期せざるとは言いがたい衝動が込み上げるのを自覚してその後姿を見つめた。その背中の作業エプロンのボタンが外れて僅かに覗いている亜希の肌が、刺すように鮮烈に迫って来る 。「欲しい」・・・、そう思ったことも否定しはしない。                                                                                                                                          高速艇の座席に座ると黒川が肩を叩いた。                                                                                           「なかなかいい娘だ。あの娘はともかく、大空は惚れてるね。そう思わんかね」                                                                  「どうですかね・・・」                                                                                                                                               『身捨つるほどの恋路はありや』・・・。裕一郎は、あの替え歌を思い浮かべていた。

 

  

つぶやき: -ブログ再開-  原発に戦争を思う  

震災・原発に戦争を見る。

少しブログが滞り、心配した数人の方からメールをもらった。有難いことです。当方「たそがれ」の「ろくでなし」、今後もこうしたことは度々あると思います。前回のコメントが3月14日なので、約40日間の投稿ストップ状態。いくつか理由はあるがいずれも些細な私事雑事。                                                                                                                                                   ストックを載せれば維持できるがそれさえおぼつかぬ精神状態。実は、・・・                                                                         パソコンのデスクトップがチラついて正視できない(遠近両用眼鏡はパソコンの半端な距離には不適。中近両用眼鏡も購入することにした)。                                                                                                 ある雑念(煩悩)にさいなまれパニック(我ながら「我を失う」に近い事態であったが、所詮は一人相撲)。                                                                                    震災・原発崩壊に言葉を失う(全てを喪って、なお生きる人々への畏敬と、翻ってそれができないだろう自己への嫌悪)(原発事変に戦争を見る)。                                                                                                                                                    阪神淡路大震災(95年)を遠因として坂を転げ落ちるように破産(98年)に向かった自己体験(どの企業もそれを克服して企業維持したのだ!)の、毎月末の恐怖の資金繰りと断末魔期約二年間の精神状態が蘇えって来ての落ち込み。                                                                                                                  震災に関連して、都内オフィス軽改修工事で繁忙(まぁ、超多忙だった)                                                                                         -これらから、ブログ更新ができない有り様。情けない。軽い「病い」だったのだろうか(苦笑)?-                            

福島の事態から、ぼくは戦争を想起していた。                                                                                                     それを推進した者の手前勝手な理屈と楽観論、「だろう」の積み重ね。その為の総動員態勢。反対し阻止しようとした者の無力感。報道・政財官学挙げた推進論。事故を機に掌を返す見苦しい論説。                                                                                                                                                     余りにも甚大な被災・被害状況に、責任論・「何故なのか」「元々の無理」を問う声はかき消されがちだ。                                                                                                                       ジャーナリズムの、「政権批判」によって自己の「翼賛体質」を覆い隠す体質。例えば、朝日は「本紙の調査により、各原発は震災等により8時間程度の送電不可への対応はあるが、今回のように数週間送電停止には対処できないことが判明した」と自画自賛していても、これまでそうした報道をして来なかったことへの「自責」の論などない。がそんなことは原発反対派は早くから指摘している。地震に関しても、広瀬隆氏などが、ここ10年が地震激発期に来ている、と大型地震の予告とそれへの原発の無防備を早くから訴え、ちょうど一年前の本にして発表していた。共産党の吉井議員は、福島に関して、地震・津波を想定した全く同じ事態を国会質問していた。                                                                                       想定外などではないのだ! マグチュードを恣意的にアップして想定外を演出しても、実は全て想定出来ていたのだ。原発は、核燃料の最終処理方法、廃炉問題、どの観点からもダメ。新たには作らない、順次廃炉する、エネルギー政策の転換を宣言するしかない。民主党政権、どうする。

被災地の、自治体職員・消防・医師・教員・自衛隊・・・、よくやっておられる。この国の教員や公務員の本質的「質」の高さを垣間見る日々です。                                                                                         これらの「誠意」と「善意」と「無私の勤勉」が、どうか「戦争」へと動員されることのないようにと祈り、そして行動したい。ぼくが40日なにも出来なかった類のひ弱な精神では、戦争を繰り返すことになるのだろう。                                                                                                                                                                                             被災地の人々の惨状と立ち上がる気力を見て、「ワシや、これではいかん」とつぶやいた40日でした。                                                                                                                                                        帰阪していて参加した4月10日の広瀬隆氏の講演会は追加開催・それでも立ち見満席となり、中ノ島反原発集会には(4月16日)に3000人が集まった。帰京していて参加できた、芝公選(今日24日)には4500人が結集した。力をもらった。デモは、まずは何よりも己への呼びかけなのだ。                                                                                  おりしも、最高裁では大江岩波裁判に最終結論(4月21日、原告敗訴の「上告棄却」)が出た。己と世を公理・道理に向かわせたい。向かっていると信じたい。                                                                                                                それにしても、今に始まったことではないが大労組よ何をしている。企業が原発を含む「いま在る」体制・諸枠組みの中に在り、その変更が少なからず自身の「基盤」を危うくするその場面に、何も出来ないことを「しがらみ」などと片付けて、容認するなら、一体何の為の労働運動か?                                                                                                             人々にとって大切なこと重要な課題とは、そしてそれへの異論発信・意義申立て・行動とは、元々己が「基盤」を危うくしてしまう要素にも充ちているのだ。安保・沖縄・雇用形態・・・、どれもみな。そうした意味で原発は「戦争のように」準備され・扇動され・実施され・報道され・行き渡り・経済と生産を支配し・大労組企業の存在前提となり・人々の「基盤」に絡み着いている。日本の大企業労働組合は戦争を推進するに違いない、と思うのだ。                

Search