たそがれ映画談義: 蘇り 溢れる映画音楽(外国映画篇)

映画に出会って以来、半世紀強。記憶に刻まれたシーンは、ときに映画音楽とワンセットだ。                                                                                         先日、『踊る大捜査線』への異論を書いた。 ( http://www.yasumaroh.com/?p=8388 )                                                                                                                            『踊る』の作り手と観客に是非とも伝えたいことを考えているうちに、次々とシーンやセリフが思い出された。                                                                   それ以上に胸に溢れて困ったのが、優れた映画音楽の数々だった。                                                                                        今回は、 YouTube に見つけて09年に作った外国映画音楽ファイルに、いくつか補充して転載する。                                                                                                      載せたくとも見つからないものがほとんどだが、これらはすべて、『踊る』の対極に在るのだ。中に珠玉のシーンもあって嬉しい。                                                                                  日本映画のものも近いうちに・・・。                                                                                                                                                                                                                                                                『汚れなき悪戯』 http://www.youtube.com/watch?v=nU1-LJ0b0PM&feature=related スペイン映画                                                                                                                                                                                                                     『道』 http://www.youtube.com/watch?v=azQPqENwTZg ニーノ・ロータ                                                                                                                            『太陽がいっぱい』 http://www.youtube.com/watch?v=eYDRkCYiY0Y&feature=fvw ニーノ・ロータ                                                                                                                             『ロミオとジュリエット』 http://www.youtube.com/watch?v=TN2RHWywEA4&feature=related ニーノ・ロータ                                                                                                           『ゴッド・ファーザー』 http://www.youtube.com/watch?v=PXEmYzq8BgY ニーノ・ロータ                                                                                                                           『刑事』 http://www.youtube.com/watch?v=yg_vJNOCiOg&feature=related カルロ・ルスティケリ                                                                                                                       『鉄道員』 http://www.youtube.com/watch?v=uR2EKbTDPds&feature=related カルロ・ルスティケリ                                                                                                         『ブーべの恋人』 http://www.youtube.com/watch?v=p5i2XRQ8vig&feature=related カルロ・ルスティケリ                                                                                                                                                                         『誘惑されて棄てられて』 http://www.youtube.com/watch?v=ZAjp9YnATIU カルロ・ルスティケリ                                                                                                                           『禁じられた遊び』http://www.youtube.com/watch?v=6-X4cAUlg8g ナルシソ・イエペス                                                                                                         『真昼の決闘』 http://www.youtube.com/watch?v=QKLvKZ6nIiA ディミトリー・ティオムキン                                                                                                         『シェーン』 http://www.youtube.com/watch?v=9DVPxbsTccg&feature=related ヴィクター・ヤング                                                                                                            『エデンの東』 http://www.youtube.com/watch?v=Olo1MoLZHA0 レナード・ローゼンマン                                                                                『ティファニーで朝食を』http://www.youtube.com/watch?v=BOByH_iOn88&feature=related  ヘンリー・マンシーニ                                                                                                                                                                           『酒とバラの日々』 http://www.youtube.com/watch?v=swHHoC1XYk8&feature=related ヘンリー・マンシーニ                                                                                                                                                                    『ひまわり』 http://www.youtube.com/watch?v=wbU-a99giUg&feature=related ヘンリー・マンシーニ                                                                                                           『大いなる西部』 http://www.youtube.com/watch?v=TWv6wqV6mxc&feature=related ジェローム・モロス                                                                                                               『日曜日には鼠を殺せ』 http://www.youtube.com/watch?v=x37qCdT8SP0 モーリス・ジャール                                                                                                      『ドクトル・ジバゴ』 http://www.youtube.com/watch?v=zDkvSKvzUBI&feature=related モーリス・ジャール                                                                                                                                                        『死刑台のエレベーター』 http://www.youtube.com/watch?v=KkXSbwyln-0&feature=related マイルス・デイヴィス                                                                                                                                                                   『男と女』 http://www.youtube.com/watch?v=2bYBn5VJ-ko フランシス・レイ                                                                                                            『日曜はダメよ』 http://www.youtube.com/watch?v=QXOZrZQrt48&feature=related マノス・バジダキス                                                                                                                                                                                *(監督ジュールス・ダッシンはロシア系ユダヤ人。マッカーシー旋風によりハリウッドを追われ、ギリシャで製作。後に主演女優メリナ・メルクーリと結婚)                                                                                                                                                                    『その男ゾルバ』 http://www.youtube.com/watch?v=4UV6HVMRmdk ミキス・テオドラキス                                                                                                                                                                                     『炎のランナー』 http://www.youtube.com/watch?v=xEF4zH6XHCk&feature=related ヴァンゲリス                                                                                                                                                    『さらばベルリンの灯』 http://www.youtube.com/watch?v=t7wj34jhR6U ジョン・バリー                                                                                            『真夜中のカウボーイ』  http://www.youtube.com/watch?v=ZGORPUzLxtU&feature=related ジョン・バリー                                                                                                               『明日に向かって撃て』 http://www.youtube.com/watch?v=hUVpYENQJMg バート・バカラック                                                                                     『夕陽のガンマン』 http://www.youtube.com/watch?v=kXmUgereD1o エンニオ・モリコーネ                                                                                           『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』タイトルバック http://www.youtube.com/watch?v=YfczFtTvzbg エンニオ・モリコーネ                                                                                                                                                        『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』デボラのテーマhttp://www.youtube.com/watch?v=E0jFrXO22_o&feature=related エンニオ・モリコーネ                                                                                                                            『ニューシネマ・パラダイス』(タイトルバック) http://www.youtube.com/watch?v=kJKbSC1dU04&feature=related エンニオ・モリコーネ                                                                                                                                     『蝶の舌』 http://www.youtube.com/watch?v=nYa19UXr-y8&feature=related スペイン映画 ( http://www.yasumaroh.com/?p=963 )

『ニューシネマ・パラダイス』(エンディング) http://www.youtube.com/watch?v=qMgTCtSxOHE&feature=related エンニオ・モリコーネ

交遊通信録: ここに 「We」が在る

Uさん メール拝受しました。ぼくも、最後のルイス・ウルスア氏救出のシーンまで断続的にTV見てました。

世界中が最初の救出ゴンドラを引き上げるワイヤーを見つめ、間もなくゴンドラが姿を見せようとする時、期せずして地上で待つ仲間の輪から歓声の掛け声が上がったね。  ビバ・チリ、ビバ・チリ、 チリ・チリ・チリ。  ビバ・チリ鉱山労働者!                                                                                                                     チリ鉱山落盤事故救出劇のクライマックスの始まりだ。翌日、メンバーのリーダーと目される最後のルイス・ウルスア氏が救出されるまで、世界中が固唾を呑んで見守ったことと思います。                                                                                                                    ビバ・チリの声に、故:アジェンデ大統領(1973年9月11日、軍部クーデターにより死亡)の最後の演説肉声が思い出され、胸が詰まります。                                                                                                         http://www.youtube.com/watch?v=SG3f08LVwhE                                                                                                       ビバ・チリ鉱山労働者! 劣悪な安全対策下で地底の重労働に生きる、33人の名も無き人々が70日間もの長期に亘り、地の底深い閉鎖空間に整然と耐え得たのは、そこに企業社会が喪って久しい「We」が在ったからに違いないと思うのです。                                                                                                                      「強圧と忍従」に支えられた【井上ひさし氏遺作:『一週間』がシベリヤ捕虜収容所を舞台に描く「ソ連型」乃至「日本軍型」】 『統制』 ではなく、                                                                                                          「信頼と自発」に基づく【「ラテン的」乃至「沖縄的」】 『連帯』 の、70日間の実相がやがて明らかになるだろうと思っています。                                                                           (「We」に関する拙文 → 『「We」の不在』 http://www.yasumaroh.com/?p=6376   )                                                                                                    33人の顔写真には、そこに モンゴロイド(つまりは、ネイティヴ南米)系の要素が色濃く見えます。事態の構造を物語っていると思います。                                                                            ビバ! 名も無き者たちの「We」感覚。                                                                                                  過去、炭鉱・鉱山の落盤や水脈破裂などで、どれだけ多くの人命が奪われて来たことか・・・。世界は、救出劇に浮かれるのではなく、危険作業下の重労働や、共助風土解体下のあらゆる人権無視労働と無権利雇用形態の「非」を自ら糾すべきだ。                                                                        その場所以外からの、33人への声援は虚しく、いかがわしい。                                                                                  33人殿、マスコミの持ち上げ、大国の国家的営業活動、チリ政権の政治利用などに振り回されず、かつメンタル復権を果たし、自己を見失わず、 そして「We」を手放さないでと希っていたい。 それが、エスペランサだ。                                                                                              

                                                                                                                              『地上の星』 http://www.youtube.com/watch?v=v2SlpjCz7uE&feature=related 中島みゆき                                                                                                                                      

 

歌「100語検索」  ⑪ <夢>

①~⑩は <河・川> <空> <夜> <時-1> <遠> <時-2> <砂> <雨> <風> <港・波止場> でした。                                                                                                                                                                  

今回のお題は <夢>                                                                                      夢は、大小・公共性と「私ごと」性・組織性と個人性・有効性と無効性 の如何を問わず<夢>である。どんなに「私」的であっても、色恋の事情であっても、はた迷惑な私怨であっても、そこには生きて行く人間の希いの核があり、多くの場合、「社会」「国家」との、あるいは地域・帰属先・家族等の黙契との、攻防を経ずには叶えられない十字架を背負って生存しているのだ。 言い換えると、そうでないもの…それは「夢」ではないし、                                                                                                 しばしば、誘導された「欲望」に基づく、その社会に公認された即物的事柄だったりもする。「夢」自身はそこからは隔たって在りたい、と言っている。                                                                                                                                                         本来、「夢」は、人が生きて行く上で欠くことのできない根拠・理由ですらある。

『My Revolution』 http://www.youtube.com/watch?v=Tm67VN__Nys 渡辺美里                                                                                                                                         『フレンズ』 http://www.youtube.com/watch?v=lFjx6ku08ok&feature=related レベッカ                                                                                                                   『言葉に出来ない』 http://www.youtube.com/watch?v=A-pMh5qGNVY 小田和正                                                                               『夢想花』 http://www.youtube.com/watch?v=zrBV5Ru31jI 円広志                                                                                                                                                                                                              『夢の途中』 http://www.youtube.com/watch?v=eWkwIZQC2vE 来生たかお                                                                                                          『会いたい』 http://www.youtube.com/watch?v=ncb-EzTfoGs 財津和夫                                                                                     『夢を味方に』 http://www.youtube.com/watch?v=RMwKfEPRdEs&feature=related 絢香                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                            『夢芝居』 http://www.youtube.com/watch?v=N3-z2sEviFs 梅沢富美男                                                                                                                                                                      『赤と黒のブルース』 http://www.youtube.com/watch?v=qYs2GFDRHZw 鶴田浩二                                                                                                                 『ffフォルティシモ 』 http://www.youtube.com/watch?v=KbBadyqsqAs&feature=related HOUND DOG                                                                                                                                                                          『夢追い酒』 http://www.youtube.com/watch?v=3Qg02cAxV1E 渥美二郎                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                           『夢去りし街角』 http://www.youtube.com/watch?v=76Ofg-Tzf-8 アリス                                                                                                                                                                                        『恋唄綴り』 http://www.youtube.com/watch?v=-GG9qApAMiA&feature=related 堀内孝雄                                                                                                                                                                                                                『夢をあきらめないで』 http://www.youtube.com/watch?v=PW_kP5uwp7A&feature=fvw 岡村孝子                                      『会いたい』 http://www.youtube.com/watch?v=lAyjsq-O3gs&feature=related 沢田知加子                                                                                           『負けないで』 http://www.youtube.com/watch?v=r3D8yAVl2c0 ZARD坂井泉水                                                                                                                            『途上にて』 http://www.youtube.com/watch?v=QB9uDJCWJhE みなみらんぼう                                                                                                                                                                        『俺たちの旅』 http://www.youtube.com/watch?v=Z3djBbe4Yw8 中村雅俊                                                                                                                                                                                                                                                       『夢は夜ひらく』 http://www.youtube.com/watch?v=DkV5Gv95Tgo 薗まり                                                                                                                                                                                             『逢わずに愛して』 http://www.youtube.com/watch?v=vR322c2PalI 前川清                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                     『時は過ぎてゆく』 http://www.youtube.com/watch?v=coiXF-PqgGQ 金子由香利                                                                                                                                                                    『真夏の夜の夢』 http://www.youtube.com/watch?v=kjn1A8D5edY 松任谷由実                                                                                                                                                                                                                                                                                                                             『哀愁のカサブランカ』 http://www.youtube.com/watch?v=IHM2145in1o&feature=related 郷ひろみ                                                                                                                               『みんな夢でありました』  http://www.youtube.com/watch?v=N4RaoKh7K2w 森田童子                                                                                                                                                                     『爪』  http://www.youtube.com/watch?v=pehEV-bniB8 ペギー葉山                                                                                                                                                                    『シェリー』 http://www.youtube.com/watch?v=knAAHHlyfc4&feature=related 尾崎豊 

♪-**-♪                                                                                                                                                            『夢を追いかけるなら 容易く泣いちゃダメさ』 (「My Revolution」)                                                                                                                                                                                                                                                         『涙枯れても 夢よ枯れるな』 (「逢わずに愛して」)                                                                                                                                                   『二人合わせたコインでも 夢が買えたねあの頃』 (「哀愁のカサブランカ」)                                                                                                                                                                    『もう一度やり直すなら どんな生き方があるだろうか』 (「みんな夢でありました」)                                                                                                                                            『あなたでなくて出来はしない ステキな夢を持つことよ』 (「爪」)

                                                                  

歌「100語検索」 ⑩ <港・波止場>

港・波止場

初めて石垣島へ行った時、石垣島から沖縄本島へ戻る際に、石垣~宮古~沖縄、その距離感を体感したくてフェリー船に乗った。琉球弧の大きさに驚いた。                                                                                                                 仮に石垣市役所を大阪駅と設定すれば、直線距離で、石垣~宮古は大阪~名古屋。その配置で行けば、沖縄本島は群馬県・茨城県となるそうだ。巨大な排他的経済水域が現出する。水産資源・海底資源の宝庫だ。将来、何が出て来るか・・・あらゆる可能性がある。のか? 地政学に照らせば東アジアと太平洋を跨いで境界に在り、その架け橋たる琉球弧の存在の重さは計り知れないのだろう。 ヤマトが手放さないはずだ。中国が羨望するはずだ。                                                                                                                         早朝石垣を発ち、午後に宮古島着、那覇には夜遅く着いた。                                                                               海洋を往く海の民が浮かんだ。ともあれ、海は広く、海は切れることなく繋がっていてひとつだが、港に生きる人々の「俗」は各島で「同じ」であって「違う」のだろうと想像した。                                                                               琉球弧を渡る民、船、文化、言葉…、琉球が「連邦」だとは理のある話だ。海域は本来誰のものだ?

ところで、本日のお題は「港・波止場」。港は海への入口・出口だが、そこに構えて人を送り出し迎え入れている。                                                                                                               大海を悠々と渡り、時に寄港する海人、寂れてもじっと佇んでいる港、その裏路地の雑踏と喧騒…、そんな風景が浮かぶ。                                                                                                 互いに憎み合い赦し合う、「切れて」「繋がる」、人・海・港。 今日は、「港」側の言い分を聞く。

『別れのブルース』 http://www.youtube.com/watch?v=UaoqnGW2P3I 淡谷のり子                                                            『港が見える丘』 http://www.youtube.com/watch?v=f-1MbSjMdug ちあきなおみ                                                             『港町十三番地』 http://www.youtube.com/watch?v=kAWV_6FNRxo 美空ひばり                                         『悲しい色やね』 http://www.youtube.com/watch?v=IK-jU0ff4fI&feature=related 上田正樹                                                                                     『港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ』 http://www.youtube.com/watch?v=2JfiKUgK2wA&feature=related ダウンタウン・ブギウギバンド                                                                      『北へ』 http://www.youtube.com/watch?v=iTq15r5mLXM 小林旭                                                         『港町ブルース』 http://www.youtube.com/watch?v=qzioiTIvP-8 森進一                                                              『釜山港へ帰れ』 http://www.youtube.com/watch?v=17cA7096SB0 チョー・ヨンピル                                                                             『港町・涙町・別れ町』 http://www.youtube.com/watch?v=miqrkUFIG5Q 石原裕次郎                                                                                        『俺は待ってるぜ』 http://www.youtube.com/watch?v=ePau6WvckJ4 石原裕次郎                                                                 『口笛が聞こえる港町』 http://www.youtube.com/watch?v=PQ1OhYYzv9Y 石原裕次郎                                             『かもめ』 http://www.youtube.com/watch?v=_kz3-njuxDY 浅川マキ                                                     『秋の気配』 http://www.youtube.com/watch?v=JtttrcLCoPY オフコース                                                                                                                    『にぎわい』  http://www.youtube.com/watch?v=cEx7qR6JDeA&feature=related 浅川マキ                                                                  『妬いてる訳じゃないけれど』 youtubeにありません。歌詞→あたしを乗せない船が、今日もを出るところ♪  中島みゆき

*背伸びして見る海峡を~♪(なかにし礼)。ええねぇ、ええ歌詞やねぇ。                                                                            *港・・・裕次郎には似合うのかなぁ~、多いねぇ。                                                                                                           *弟へのコムプレクスに生きた生涯に気付かぬ、あの兄に最も相応しくない場所こそが、「港」です。

たそがれ映画談義: 『踊る大捜査線』-  ♪ 踊る作者に 観る観客 ♪

『踊る大捜査線』に視る奴隷根性と権力性、それは今風日本映画の立位置を映し出す。

10年近く前、TV局が、TVスタッフの手で、TVシステムによって作り上げ、事前大宣伝を経て空前絶後の大ヒットとなった映画『踊る大捜査線』を見たとき、言いようのない辟易感に襲われた。                                                   主人公と彼を取り巻く人物たちの「無自戒」、映画の製作者・監督の「勘違い」、観客たちの反応に見える「軽薄」・・・。とりわけ織田祐二演ずる主人公青島が、柳葉敏郎演ずる同世代キャリア上司:室井に言う下記の科白には反吐が出る思いだった。                                                         記憶は曖昧だが、その趣旨は概ね以下のようなことだった。                                                                          「ぼくら下の者は、上がシッカリしてくれていて努力できるのだ」「だから、上は上でそれを汲み取って出世してもらわないと」                                                                                            一部でキャリア・ノンキャリアの垣根を越えた「解り合い」だとか、働く者の気持ちを「言い当てている」と言われたりしたが、果たしてそうなのか?                                                                  ノンキャリア組の心情がそうした諦念(荒廃?)の中に在るという、今日的職場風土を示す皮肉だと言うのなら頷けもする。 だが・・・、青島君は、明るく元気で、自己と職場を全面肯定しつつ嬉々として立つのだ。                                                                                                                                                                                                                                            

話は飛ぶが、同じ現場刑事でも、内田吐夢監督の秀作飢餓海峡(64年、東映)の伴淳三郎演ずる弓坂刑事には、意地と執念のブツであり刑事人生を凝縮したような仏ヶ浦の「灰」を、幾年にも亘って握り締めている、地を這う捜査員のノンキャリア魂があった。そこには「上は上で云々」などという「代行性」を断じて拒否する、捜査員・ノンキャリア勤労者の「努力や誠実」が在ったぞ。                                                              それは、懸案を上司やキャリア組への委任や委託で終着点とする棚上げではなく、懸案をいわば我がこととして永遠に「抱え込む」気概・矜持に基づいていたのだ。                                                                                                          「下の者」のこの気概の解体・喪失・放棄・忘却こそが、実は「上の者」の支配性より強固な要素として、「権力性」の核心を打ち固めているのだ。国家規模の強権支配は、一握りの支配層の圧政を前提としつつ、民のそうした気概の解体と諦念の上にこそ貫徹されて来た。                                                                                                                                      『踊る』のファンには不愉快だろうが、そのことに無自覚な度合いこそが、『踊る』的映画をヒットさせてしまう社会の、ある度合い=荒廃度合いだと言えなくはない。

 さて、『踊る』自体だ。(黒澤『天国と地獄』のピンクの煙のパクリは、たとえパロでも、論評する気にさえならん!)                                                                                   先日、「日本映画専門チャンネル」で『「踊る大捜査線」は日本映画の何を変えたか』なるリレー・トークを観た。10人の「映画通」が語っている。                                                                                                                        多くは、肯定・映画の敗北・当然の帰結・観客が選んだ結果だ・これも映画だ・・・・、との「現実追認」に終始している。                                                                                                   その中で、雑誌『映画芸術』編集長:荒井晴彦だけが「まとも」なことを言っていた。                                                                              気になって、各発言の採録である番組と同タイトルの新書(幻冬舎新書、¥800)を購入した。                                                                                                      以下に荒井発言を抜粋する。

『結局はフジテレビのプロモーションの力でしょう』 『テレビが勝ったのではなく、映画がダメになったのです』 『映画自体が乗っ取られた』 『映画館の大きなスクリーンでテレビドラマを映しているのと同じです』                                                                『僕らの年代は』 『なぜこんなものを映画館でやっているんだというような違和感を抱く』 『若い人たちはその違いを知らないから、何のわだかまりも無い』                                                                                         『「踊る」以降は「映画の監督がつまらん作家性なんか出すより、テレビのスタッフが映画もやったほうがかえって当たる」というわけです』 『「踊る」の亀山プロデューサーは』 『「なぜ彼や彼女は犯罪を起こすに至ったのかを描かなくていい」と言ったそうです』 『「犯人のバックグラウンドを描くな」ということです』                                                                                     『「踊る」以降の作品に描かれる犯罪は、「たまたま、ただのヘンな人が暴発したからおこったこと」になってしまった』 『犯人が捕まったらそれで終り、それで解決でいいということです』                                                                                                               『よくテレビでは「小学生でもわかるような表現じゃないとダメだなんだ」という言い方をします。でも僕は万人にわからせることだけがすべてではないだろうと思う』 『100人のうち10人がわかればいいという映画があっていいと思う』 『わかるのは二人ぐらいでいいんじゃないかと思うし、さらに言えば、たった一人でもいい。究極的には、作った俺さえいいと思えればいいんだ、とも思います』                                                                                            『見やすさだけ、わかりやすさだけが最優先されるのは、本当にいいことなんでしょうか』                                                                    『もちろん徹頭徹尾そういう作り方ではまずいけれど』 『すべての映画を、黙って座ってボーッと見ていてもわかるものにするのはどうなのか』                                                                                                   『今は』『観客の側が勉強して映画を理解する文化がなくなってきている』 『こうなったのは、作り手のほうが、「勉強しなくいいんだよ、考えなくても楽しませてあげるよ」と言ってしまったからです』   『監督や原作の作家が、何を描こうとしていたのかを知ろうとして、その作家の生い立ちなどを別の本で調べたりするうちに、どんどん映画に深くはまっていくこともあった』                                                                                                                                    『作品に匿名性のようなものが生れて、似通った作品ばかり』 『作品に個性がないから、顔がみえない』                                                                                        『そもそも映画は「娯楽」と「芸術」という、相反する要素を持ち合わせたもので』 『作り手は、芸術であるとまでは言わないけれど、全くの売り物だとも思っていなかった。「商品」「作品」の間で行ったり来たりして、悩んでいました』 『今の若い作り手たちは違います。彼らは自分のやりたいことを通すというよりは、お客さんを入れることを第一に考えるようになった』                                                                                                                                       『僕は昔からお客様は神様だと思ったことは一度もない』 『神様はバカ様になった』                                                                               『映画館の闇の中で、僕たちは人生を変えるような、魂を震わせるような何かと出会うことが出来た』                                                                          『今の映画は、ヒットすることと引き換えに、そういった陰影や多様性を切り捨ててしまった』                                                    『亀山プロデューサーは』 『勝つにはどうしたらいいかを考えて、その結果勝ったのはすごいことです』                                                                                                         『平野謙という文芸評論家が「畢竟、文学とは我を忘れさすか、身につまされるか、ではないか」と言っているのですが、映画もそうじゃないかと思います』                                                                                                           『我を忘れさせる映画の典型が「踊る」でしょう』 『映画館を出たら、ああ面白かったとその映画も忘れてしまうのではないか』 『僕は、身につまされる映画を作りたい』 『人に忘れられない映画を作りたい』                                                                                                      『文学や映画をエンターテインメントこそすべてとその枠に押し込めることで、そこにある生き方・考え方・価値観を揺り動かす力を捨ててしまうのはあまりにも惜しい』**********************************************************************************************************************************************

荒井の、いまどきの映画と観客への言い分は、そのまま映画『踊る』への、『踊る』登場人物への異論となっている。それは、現実への視点を欠き(欠かざるを得ない)、現実「回避・逃亡」に終始する、CG満載の近未来絵空事や有り得ないパニックにしかドラマを構成できない米映画作家の今日的立ち位置、その亜流たる日本映画への異論であり、同時に米帝国とグローバリズムへの鋭い文明批評として聞こえて来る。

荒井晴彦:1947年生まれ。1970年、早稲田大学文学部除籍。(なるほど・・・あの時代の、あの毒を浴びた同輩か・・・)                                                                      若松プロ助監督を経て、脚本・監督業。現:『映画芸術』編集長。                                                                                                                                                                                                                           脚本:                                                                                                  『神様のくれた赤ん坊』(78年)、『遠雷』(81年)、『時代屋の女房』(83年)、                                                                                                          『探偵物語』(83年)、『噛む女』(88年)、『眠らない街 新宿鮫』(93年)、                                                                                                         『絆-きずな』(98年)、『KT』(02年)、『やわらかい生活』(06年)                                                                                                                                  監督:                                                                                                              『身も心も』(97年、脚本とも)http://movie.goo.ne.jp/movies/p30683/comment.html

 ☆                                                                                                                                                       『やわらかい生活』はええです。大東京に生きるシングル女性(確か、上場企業の元総合職だった)。                                                         友の死をきっかけに陥った「うつ」、ドロップアウト、孤独・・・、それらを受け容れる「やわらかい生活」を                                            求め彷徨いながら、自己再生を「やわらかに」展望する主人公・・・。                                                                                                                                            寺島しのぶの存在感に救われた作品だった。                                                   蒲田というごった煮の土地柄もあってひときわ心に沁みました。→ http://info.movies.yahoo.co.jp/detail/tymv/id324265/                                                         出演:寺島しのぶ、豊川悦司、妻夫木聡、大森南朋

歌「100語検索」 ⑨<風>

『誰が風を見たでしょう』 http://www.youtube.com/watch?v=mhSvrv0sSHs  訳詩:西条八十                                                                                                                      そうか・・・、誰も風を見てはいない。風によって事物に起きている現象を見ているのか・・・。                                                                      ぼくら、人を見るにも、人そのものではなく、所属・肩書・見聞きできる言動・財力・風貌・家族・交遊関係・etc を見ているもんな・・・。 『旅人よ』 http://www.youtube.com/watch?v=fgB5dwZmnj4 加山雄三                                                                                                             『旅人よ』 http://www.youtube.com/watch?v=2Cnox6lpmBs&feature=related 小椋佳                                                                                                     『風』 http://www.youtube.com/watch?v=buVGukob6bM はしだのりひこ&シューベルツ                                                                                   『あなたの心に』 http://www.youtube.com/watch?v=cdZO6F4GqO0&feature=related 中山千夏                                                                                二階堂CM 『風の海峡篇』 http://jp.youtube.com/watch?v=hD158XCnULw&mode=related&search                                                                                            『すきま風』 http://www.youtube.com/watch?v=tTe8xUzTqRo 杉良太郎                                                                                『寒い朝』 http://www.youtube.com/watch?v=boh54N67Cck 吉永小百合                                                                『風の谷のナウシカ』 http://www.youtube.com/watch?v=BHUAFb711zI 安田成美                                                                      『風が泣いている』 http://www.youtube.com/watch?v=k96wT0tNWL4 ザ・スパイダーズ                                                                                          『亜麻色の髪の乙女』 http://www.youtube.com/watch?v=QizQYuYxeCM&feature=related ヴィレッジ・シンガーズ                                                                                            『途上にて』 http://www.youtube.com/watch?v=QB9uDJCWJhE みなみらんぼう                                                                         『風雪流れ旅』 http://www.youtube.com/watch?v=Sw4URWJXjSw&feature=related 北島三郎                                                                                                                 『ふるさとの話をしよう』 http://www.youtube.com/watch?v=2fpPNjnv52k&feature=related 北原健二                                                                                            『ルビーの指輪』 http://www.youtube.com/watch?v=a8_PDA5LJkY 寺尾聡                                                                          『古城』 http://www.youtube.com/watch?v=-VGwLw4N1tQ 三橋美智也                                                                  『千の風になって』 http://www.youtube.com/watch?v=plkH6q-vsPg 秋川雅史                                                                                    『贈る言葉』 http://www.youtube.com/watch?v=MvY-RsU3Iv0&feature=related 武田鉄矢                                                                                                                                    『青い珊瑚礁』 http://www.youtube.com/watch?v=D_hm5QrFxt4 松田聖子                                                                                      『風立ちぬ』 http://www.youtube.com/watch?v=eNa2jyxx2Ho 松田聖子                                                                                    『愛と風のように』 http://www.youtube.com/watch?v=bObIXBo0p24 日産スカイラインCM                                                                                                                       『明日は明日の風が吹く』 http://www.youtube.com/watch?v=NyhPHPJYxgc&feature=more_related 石原裕次郎                                                                                『夜風の中から』 http://www.youtube.com/watch?v=hZXDHCVmc3Q 中島みゆき                                                                         『まつりばやし』 http://www.youtube.com/watch?v=nnSQKb9CppE 中島みゆき                                                                                     『彼女の人生』 http://www.youtube.com/watch?v=JMgUn6h9ads&feature=related 中島みゆき                                                                                    『地上の星』 http://www.youtube.com/watch?v=v2SlpjCz7uE 中島みゆき                                                                         『ヘッドライト・テールライト』 http://www.youtube.com/watch?v=mZCbegorwZs 中島みゆき                                                                                                                                                『二人の世界』 http://www.youtube.com/watch?v=vcb_y8vNoak&feature=related あおい輝彦                                                                                                『TSUNAMI』 http://www.youtube.com/watch?v=MR_jF2KFnsw&feature=related サザン桑田佳祐                                                                                                                『星空のディスタンス』 http://www.youtube.com/watch?v=1fgrfkd5bj8 THE ALFEE                                                                                         『島唄』 http://www.youtube.com/watch?v=oFSDyM8whtk 宮沢和史                                                                                                       『愛しき日々』 http://www.youtube.com/watch?v=JbJ-M7AGN-Y&feature=related 小椋佳                                                                                                           『青春の影』  http://www.youtube.com/watch?v=eHSMj2iow9k チューリップ財津和夫                                                                                                                              『リンゴ追分』 http://www.youtube.com/watch?v=xkEIgGotf7c 美空ひばり                                                                     『夏の想い出』 http://www.youtube.com/watch?v=QXWv5JOFHCo 倍賞千恵子                                                                                                      『TRUE LOVE』 http://www.youtube.com/watch?v=SWpkGKvhh2I 藤井フミヤ                                                                   『風になりたい』 http://www.youtube.com/watch?v=bCswh-TO6Us THE BOOM(宮沢和史)
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                   

交遊通信録: 母卆寿祝い会

Sさん、                                                                                                                                                                                   いつか貴方からお褒め頂いた歌 枯庭に 白き水仙匂い立ち 独りの冬を誇らしげなるの作者:我が母の「卆寿祝い会」で帰阪しました。                                                                                                        9月20日、一年遅れ(昨年、新型インフルエンザで延期)の会には、母、息子四人とその妻:計8名、孫と配偶者:計15名、曾孫:7名・・・                                                                                                                                    総計31名が集いました。                                                                                                                                                                        

母の人生は、軍国・封建・戦争の「昭和」の、もちろんどこにでも在った「女」の人生ですが、母の曾孫たる我が女児孫(三歳)を見ていると、母の乳幼児期との対比から、時代は戦争・敗戦という受難・画期・代償を経て、市井の人々の努力によって、緩やかに(近年は急激に)変化したのだと思い至るのです。我が女児孫(母の曾孫)の笑顔と活発な振舞は、21世紀両親から注がれる愛によって育まれたものであるのは当然でしょうが、母が乳幼児期に表すこと叶わなかった個性、そのDNAに因るものなのだろうと思わずにおれません。 民が、国や強権を押し返して代を越えて引き継いで行くものとは、たぶんこうしたことの中にあるのだろうと思えるのです。我が女児孫が、そのことを感じ・学び・考え、時代や歴史を識る女性に育ってくれと願うばかりです。                                                                                                                                                                                                        

【写真上 左:曾孫代表=長男の長男の長男から花束を受ける母。中:集合写真。右:幼児期の母。  下:人形を抱く女児曾孫=三男(私)の孫】

                                                                                              【注】                                                                                                                                                                                                                                             乳児期を乳母の許で育った母は、ゆえあって、三歳で実家に戻った。                                                                                                                                          生母になつかず、実家に馴染まず、いっしょにやって来て大切にしていた人形を抱いて、乳母恋しと毎日泣いたといふ。                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                その人形が、ある日を境に突然姿を消す。その日の記憶は鮮明で、母の歌集に

 「みれん断ち実母に返すが此の稚児の 幸せならんと諦めし乳母」 
 「やすらかな寝息たしかめ帰りしとう 若かりし乳母とわれとの別れ」
 「乳母里より付き人のごと添いて来し 田舎人形夜ごと抱きしよ」
 「いつの間にか姿消したる縞木綿の 人形恋いて泣きし幼日」  とある。
 (私は、角田光代:著『八日目の蝉』を読んだ際、会ったことのないこの乳母とその母性を強く思い浮かべた。)
 
誰が何を想って棄てたのか?と問うている。                                                                         
三歳児の記憶としては、あまりにも重く酷な記憶だ。                                                                       
以来、互いにとって「不幸な母子関係」が永く続くこととなって行く。( http://www.yasumaroh.com/?p=3196 )
                                                                                                                                                                                                             06年、80代半ばの母は数年かけて書き綴った「自分史」を上梓。                                                                                                                                                個人史でありながら、贔屓目に見れば、期せずして背景に「昭和」という時代とその中を生きた「おんな」・戦争という民の受難など を浮かび上がらせてもいる。船場道修町商家の家父長制・空襲・焼跡・闇市・雑炊食堂・etc ・・・・。                                                                                                                                                                                       が、乳母への思慕と切情・幼い胸にわだかまる孤絶感は充分に語り切れなかったようだ。現在、私の弟が聞取り・録音作業をしてくれている。

歌「100語検索」 ⑧<雨>

雨が事態を和らげるのか強調するのか…、よき未来を招くのかさらなる不運を呼ぶのか…。                                                                                   雨は主人公の心の鏡でありながら、何も映してはくれない。雨はただ降る、何かを流しもするし溜めもする。けれど、雨に乗せて唄うことで、                                                                                                                                    人は自分以外のものを取り去った(つまりは己の)心の「再生」への入り口には立てる。だから、口に、心に、胸に、雨を唄うのだ。                                                                       最後に決めるのは自分自身なのだ、と知っているから…。 それが「自立」なのか・・・

『アカシアの雨がやむとき』 http://www.youtube.com/watch?v=ARZJWtLxBdU&feature=related 西田佐知子                                                                   『雨の慕情』 http://www.youtube.com/watch?v=P0I3moSIU4M 八代亜紀                                                                                   『雨の御堂筋』 http://www.youtube.com/watch?v=BJtB1PDECYc 欧陽菲菲                                                                                              『雨がやんだら』 http://www.youtube.com/watch?v=oFJc3MmP3to&feature=related 朝丘雪路                                                                                       二階堂CM 『雨宿り篇』 http://www.youtube.com/watch?gl=JP&feature=related&hl=ja&v=W_DSzGD3210                                                                                                                                           『恋人も濡れる街角』 http://www.youtube.com/watch?v=JgCW3YTwlwc 中村雅俊                                                                                 『長崎は今日も雨だった』 http://www.youtube.com/watch?v=3x2NGqGkQnQ 前川清                                                                 『東京の灯よいつまでも』 http://www.youtube.com/watch?v=UlWamPQF_lo 新川次郎                                                                                              『傘がない』 http://www.youtube.com/watch?v=LoO5HXMK9V0 井上陽水                                                                                                                 『城ヶ島の雨』 http://www.youtube.com/watch?v=BV0uzKq65NU 倍賞千恵子                                                                                      『みずいろの雨』 http://www.youtube.com/watch?v=8ogEeVGizVM 八神純子                                                                                                                                                                      『雨の物語』 http://www.youtube.com/watch?v=lbd-5yNIEnA&feature=related イルカ                                                                        『たしかなこと』 http://www.youtube.com/watch?v=I-yHDph56Rk 小田和正                                          『愛はかげろう』 http://www.youtube.com/watch?v=9FTLqtFpzxQ 雅夢                                                                         『雨に濡れた慕情』 http://www.youtube.com/watch?v=Z260Zhrr1_M ちあきなおみ                                                                                       『黄昏のビギン』 http://www.youtube.com/watch?v=SqJJPxwSYho 水原弘                                                                                        『狂った果実』 http://www.youtube.com/watch?v=CMclSzZQnXM アリス                                                                                     『雨・・・』 http://www.youtube.com/watch?v=6ty7qImvMhU&feature=related 小柳ルミ子(中島みゆき)                                                                                                                                 『雨が空を捨てる日は』 http://www.youtube.com/watch?v=5YwbH38eh8g 中島みゆき                                                                                                                                                                                                    『カスバの女』 http://www.youtube.com/watch?v=IjaRFMt5xZY 緑川アコ                                                                                        『京都から博多まで』 http://www.youtube.com/watch?v=j7mUSqsL0as 藤圭子                                                                                           『先生』 http://www.youtube.com/watch?v=MW0mffJDCPE 森昌子                                                                        『冬が来る前に』 http://www.youtube.com/watch?v=MOzjNObizXY 紙ふうせん                                                                                                         『はじまりはいつも雨』 http://www.youtube.com/watch?v=oMGbz6BtHqE&feature=related Aska                                                                                                                                                         『ヨコハマ』 http://www.youtube.com/watch?v=9fAttmTjKUo 山崎ハコ                                                                                                                                                                                『愛燦燦』 http://www.youtube.com/watch?v=20IutvIryNo&feature=related 小椋佳 

雨に濡れし夜汽車の窓に                                                                                                映りたる                                                                                                                       山間(やまあひ)の町のともしびの色      (石川啄木『一握の砂』所収)

交遊通信録: ぼくにとっての金時鐘ー2

【長くなるが、別の処に書いた、金時鐘に関する拙文から抜粋転載】                                                                                                 (03年4月、清真人主宰:『共同探求通信21号』より)
-(中略)-
『街に万歳(マンセー)!の歓喜の声渦巻く、1945年8月15日・十六才の夏、日本の敗戦と故国の解放を、虚脱の中「皇国少年」の自己解体として迎え、突然「与えられた」祖国にとまどいながらもやがて学生として光州で南労党と出会い、十九才の時殺戮の済州島を脱出、49年6月兵庫県須磨に密航した元・南労党予備党員のあの詩人。「日帝統治」「分断」「在日」の、その幾重もの痛切を一身に刻み込んで「在日」を生きる詩人、金時鐘(キム・シジョン)その人だ。                                                                             「クレメンタインの歌」こそは、母国語を棄てた少年期の彼と朝鮮語とを繋ぐ歌であった。日本敗戦のあと「海行かば」や「児島高徳の歌」を歌っては何日も涙を流したという彼…。やがて、ひとりでに口を衝いて出た歌、かつて父が口ずさんでいた歌によって「かようにも完成をみていた皇国臣民の私が、朝鮮人に立ち返るきっかけを持ったのはたったひと筋の歌からであった」という。
それがこの「クレメンタインの歌」なのだった。                                                                           『ネサランア ネサランア(おお愛よ、愛よ)
ナエサラン クレメンタイン(わがいとしのクレメンタインよ)
ヌルグンエビ ホンジャトゴ(老いた父ひとりにして)
ヨンヨン アジョ カッヌニャ(おまえは本当に去ったのか)』                                                                     『釣り糸を垂れる父の膝で、小さいときから父とともに唄って覚えた朝鮮の歌だった。父も母も、つかえた言葉で、振る舞いで、歌に託した心の声で、私に残す生理の言葉を与えてくれていたのだ。ようやく分かりだした父の悲しみが、溢れるように私を洗って行った。言葉には、抱えたままの伝達があることも、このときようやく知ったのだ。乾上がった土に沁む慈雨のように、言葉は私に朝鮮を蘇らせた。
・・・中略・・・ひとりっ子の安全を、恨み多い日本に託さねばならなかった父の思いこそ、在日する私の祈りの核だ。』                                                                                           『後ほどアメリカの民謡だということを知って、少々がっかりしました』『誰が唄いだして、誰がこの歌詞を書いて私にまで伝わって来た歌なのかはしりませんが・・・』                                                                                                                                       『どうであろうとこれは私の“朝鮮”の歌だ。父が私にくれた歌であり、私が父に返す祈りの歌なのだ。私の歌。私の言葉。この抱えきれない愛憎のリフレイン―――――』(金時鐘「クレメンタインの歌」1979)                                          
                                                                                                             ☆ 日帝支配末期、使ってはならない「朝鮮語」だけの生活を貫き通し、民族服禁止に従わず悠然と町を出歩き、そのくせ「朝日」「毎日」を黙って読み、ぎっしり日本の本のつまっている部屋を持ち、無職の釣り人を通した父。解放されるまでついぞ日本語を使わなかった父。その父が「四・三事件」で彼が追われるようになると、あるだけのコネと、なけなしの財をはたいて日本へ密航させる。「ひとりっ子の安全を、恨み多い日本に託さねばならなかった」父に、金時鐘は当然その後会っていない。永く反共軍事独裁国家であった父の住む地に戻ることは死を意味した。「金大中が大統領になったおかげで数年前、韓国を訪れることができ、親の墓を死後四十年数年ぶりで探すことができた。全くの特別配慮であり、朝鮮籍のままでは来年からは難しいかもしれない。せめて年一回ぐらいの草刈と墓参りは続けたいが・・・」(02対談)                                                                                                                                                 -(中略)-
『在日を射抜く覚悟のないどのような言説も、日本人に届くことはないのだと彼は語る。「正義の渦中に在って、抑圧される者の安逸さをむさぼって来た者の、わたしはひとりなのです」「日本人の非をさらし、日本人の原罪をうちつける側にだけ在日朝鮮人をすえようという思いにかられての認知は、糾されねばならない」』
「『在日』のはざまで」収録の各小論より)                                                                            -(中略)-                                                                                                                             

朝鮮人と日本人の誰もが込み上げるものを押し殺していて、満席の会場は静まり返っていた。後ろの席で年長者がすすりあげている。
金時鐘のひと言ひと言は、人々の、ぼくの、一体何を揺さぶっているのだろう? 何に届いていたのだろう。
ぼくの浅はかな年月が、「闘い」の自称「蹉跌」が、僅かばかりの自負のこころが彼の日本語の、誠実な・か細い・老いた・ハガネのような精神の腕に、わしづかみにされていた。その日本語は、植民地朝鮮で無垢な少年期に彼が無防備に受け入れ進んでそれを用い、原初の思考・心底の自我形成に動員した言葉であり、それはまた、幼い日に奪われ棄てた朝鮮語への、彼の愛と負い目と渇望を逆説的に白状する言葉であり、彼の全身に宿り人生にへばりつきぶらさがる「恨(ハン)」である。
 金時鐘はこう言っている、「わたしの日本語は、私を培ってきた私の日本語への報復でもある」と。

-中略ー                                                                                                 吹田事件の精神を語り、彼の記念講演は後半にさしかかった。粗末なバラック建ての民族学校建設の労苦など、自身の当時の取り組みを語り、話は「吹田・枚方事件」直前の時期に及んでいた。
金時鐘は嗚咽していた。73年の間、この詩人とともに世を生きた肩と背が、小刻みに震えている。ときに言葉を途切らせながら、それでも聴衆に正対して威をただし、語られた中身は「吹田事件」に関わった人々を讃える言葉でも、その闘いの理念を歌い上げる類の言葉でもなかった。語られたのは、生野の在日の街工場の「忘れられない」叫びと視線のことだった。
軍需列車を一時間遅らせば、同胞千人の命が助かる・・・そう言って朝鮮戦争二周年の「吹田闘争」は闘われた訳だが、生野の鉱工業在日街工場はその末端まで「軍需」にさらされていた。泥と悪臭の、汚染された河をさらって得た銅は、街工場に持ち込まれ「銅ざらい」の人々の今日明日の糧となる。銅は加工され[何かの部品]になって行く。加工工場のそうしたささやかな工賃収入は、工場主一家と従業員の生活を支えることになる。工場は小松製作所の孫請けなのだ。日本陸軍の砲弾70%を製造していた枚方工廠あとを払い下げ受けた民間、あの小松製作所だ。小松製作所は朝鮮戦争に使用される爆弾の国内生産の過半を製造していた。街工場で作る[何かの部品]とはネジピンなのだ。後年ヴェトナム戦争でナパーム弾として名を馳せるものの原型たる親子爆弾の、その信管のささえのネジピンであった。
嗚咽を押し殺し、絞り出して語られる、金時鐘の講演は「街工場の忘れられない叫びと視線」について語り始めていた。
街工場へは、まず説得活動を何度か試みる。当然の説得不調のあとに待っているのは、祖国防衛隊による生産手段の破壊だ。破壊されてしまった粗末な機器を背に、彼を見据えていた工場主の視線が「いまも私を見据えている」のだ。
「息もたえだえなモーターにのたうつベルトにさいなまれる真鍮棒の金切り声を押し殺すように、私は最後の説得に牙をむいていた。・・・中略・・・『金がなんだ! 同胞殺戮に手を貸して何のお前が朝鮮人だ!』・・・中略・・・単なる一個の、変哲もないネジであって、それが親子爆弾の、信管のささえとは信じようがなくて、追われるように数をこなして、見つめる者のかすんだ視力に、それは一個のパンである。・・・中略・・・朝鮮戦争は今を盛りの、二周年記念が明日だった。私は首を横に振り、レポは走り去った。間もなく血祭りが始まる。青年行動隊の荒々しい怒りが爆発する。・・・中略・・・老母は『殺せえ!殺せえ!』と叫んだ。放心した彼は、割られたメガネを拾いもせず、『俺はヤメヤ、ヤメヤ、おっかあー! チョウセンやめやああー・・・・・』よたよたと母のへたっている地面にくずおれた。」(「欠落の埴輪」1971
 朝鮮の為の正しかるべき行動が「殺せえ!殺せえ!」にたじろいでいる。朝鮮人の確立への半歩が「チョウセンやめやあー」に足止めを食らっている。だが、目の前では、同胞殺戮を阻止する「正義」が行われているのだ。工場主と母の、その叫び、その視線、その光景がいまも「私をさいなむ」のだ。
 金日成神格化への疑問、政治や組織運営にとどまらず全領域に亘って食い違う「流儀と作法」、日本語詩作をめぐる応酬(金時鐘も梁石日も「母国語を使うべし」とした組織と対立した)等々があり、70年に総連を離れる。
「私をさいなむ」のは、「一時期、北共和国に民族の正義をみた時期があった。その不明」と、しでかした行動の本来の決済元を脱藩したこととが重なって迫って来るからだ。繰返し襲って来る、かの行動を「さいなむ」精神は、云わば宙ぶらりんのまま、自身に戻ってくる。金時鐘はしかし、講演のメインに「吹田・枚方」の決意や熱情ではなくこの話を据え、寒風吹きすさぶ「崖」の途中におのれをさらして立ちつくす。そこが「在日を生きる」孤高の詩人のハガネの精神の「在処」ゆえに。

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『・・・詩は好もうと好むまいと現実認識における革命なのです。・・・見過ごされ、打ち過ごされてることに目がいき、馴れ合っていることが気になってならない人。私にはそのような人が詩人なのですが、その詩人が満遍なく点在している国、路地の長屋や、村里や、学校や職場に、それとなく点在している国こそ、私には一番美しい国です。』
(06年12月、朝日新聞。安倍の「美しい国」発言に抗して)                       

                                                                                                            

                                              

                                                                     

                                                 

                                                        左: 9月4日、懇親会で中年婦人(オッと、これはわが女房では?)から著書にサインをねだられ、丁寧にも言葉を添える金時鐘氏。                                                                                       中: 同日、三次会で・・・。ユーモアを交え若い人を励ます金時鐘氏。                                                                         右: 07年2月、拙作『祭りの海峡』出版時の集いで・・・。 因縁浅からぬ大阪城(梁石日著『夜を賭けて』参照)を背にし、つい感極まる金時鐘氏。                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                       

                              

交遊通信録:  ぼくにとっての金時鐘-1 (KKさんへ)

KKさん。金時鐘『失くした季節』出版記念シンポジウムへのお招き、ありがとうございました。(貴女の「書」、いつ見てもええねぇ!)

9月4日、金時鐘さんの近著、詩集『失くした季節』の出版記念会への出席の為、帰阪した。                                                                                                  大学の後輩、詩人:KKさんからのお誘いだ。後輩と言っても、ぼくは二年しか在籍しておらず、その後知り合った詩や表現の世界の「道案内」人だ。彼女は、ぼくにとっては年齢や入学年次では後輩ではあるものの、そちら方面の先輩であり、ぼくを金時鐘に引き会わせてくれた恩人でもある。                                                                                                                                                                  02年。                                                                                                                    労働争議・職場バリケード占拠の果てに77年から20年続けた労組自主経営の会社を、98年に破産させてしまい、あれこれの失敗・自業自得の不遇などが重なり行き詰ったまま21世紀を迎え、ぼくは、何を何処からどうやって解きほぐせばいいのか進退窮まっていた。                                                                                                                                                                                                                          金時鐘に興味と共感を抱いていたぼくは、「吹田事件50周年記念シンポジウム」で氏の講演を眼前で聴き、いよいよハマってしまい、ここに己の再建の鍵ありと思え、やがて書き始めた駄小説『祭りの海峡』(http://www.atworx.co.jp/works/pub/19.html)に、金時鐘氏を「ある詩人」として間接登場させてしまう。古い映画 けんかえれじい』 (66年日活、監督:鈴木清順、出演:高橋英樹・川津祐介)のラストに緑川宏扮する北一輝が、主人公の気分を象徴して、黙して(しかし圧倒的に)登場するが、その手法を使ったつもりだった。振り返れば身勝手で安易な手法だった。                                                                                                                                              67年19歳のぼくは、札幌のパチンコ屋に住込みで働いていたのだが、そこで出会う釘師兼マネージャー新山という男の、言葉にまとめられない「在日する生」「精神世界」「民族」「組織の流儀への違和」などを、この釘師の「ある詩人」(これを金時鐘だと匂わせた)への心酔として表したのだった。作中、釘師:新山に「ある詩人」のことを「ワシの、詩の師匠や」と語らせる。                                                                                                                               政治も思想もそして世の現実も知らない若造が、それでも直感的に掴んだこの釘師:新山像とその背後に巨大なものとなって永く居座るもの、釘師がそれと格闘し「密かに」続けている詩作、その根拠…に出会って行く。                                                                                                                                                                                                               60年代後半の時代精神や気分と、そこで生き・生きようとした原初の精神を、21世紀の己の混迷を解く鍵になるかも…と書いたのだった。                                                                                                                                                                                 拙作の紹介ではないので、『祭りの海峡』の主人公・釘師・ある詩人の話は止めておくが、ぼくが「札幌パチンコ屋物語」を書くと決めたのは、間違いなく「吹田事件50周年記念シンポジウム」での金時鐘講演であった。自分のささやかで風化しそうな体験を基に書き、己の復権の手立てを考えていたのだと思う。                                                                                                                                                                                                 経過は省略するが、07年2月、拙作『祭りの海峡』の出版時の集いには、KKさんの骨折りで、金時鐘氏が一時間弱の講演に来て下さった。その日の 『負け続けることを止めた時、それが本当の敗北だ』 という言葉は、参加してくれた人々全員の心に刻まれている。(写真右)

話を、今回9月4日の出版記念会のシンポジウムに戻す。                                                                                                                                                            細見和之氏が会場からの発言を受けて(すみません、会場発言の詳細は失念)いいことを言った。                                                                                                                                      「ロシアと言えずついソ連と口走ったり、ベイスターズと言えず大洋ホエールズと言っても通じないように、反スターリニズムなどという言葉も、今の若い人にはそもそも社会主義国やスターリニズムへの同時代性や体感が無い中で歴史としてしか伝わらないのか? 反スターリニズムとは何なのかを伝えるのは大変だと思うけれど、スターリニズムという言葉を使わずに、その意味を伝える言葉をぼくらが掴まないと、と思う」(要旨)

 

思うに、そのことを生涯かけて実践して来たのが、金時鐘であり、金時鐘の詩だと思う。 

スターリニズム。その根源は何なのか? 民の抗いの組織的表現体とは、在るべき社会への、本来無垢で勤勉な人々の熱い希いや要請であり、その現実的運動の推進に是非とも必要ゆえ在るものだが、それゆえにこそ、その内部に抱える避け難い業があった。
もともと、社会の事態を変えるには、その為の組織が、正しかるべき中枢指令塔が、必要なのだ。だが、正しい理論・それに基づく唯一の党・ゆえの一党独裁・・・から指導部の絶対性(その果ての一個人の絶対性)へ至る回路、 そして自由選挙の否定・複数政党の否定・自立した労働運動や市民運動の否定…から異論の物理的排除・強制収容・粛清に至る回路、それらが待っていた。                                                               
ぼくらの時代で言えば、抗いの現実渦中に在る者は、外に居て思索する者の言をいかがわしいとして耳を貸さず、外からことの核心を突いていると自称する思索者は、渦中の者の共犯性をあげつらった。現場性と思索性の往還の隘路に在る者は、スターリニズムを打倒するに、違うスターリニズムで対峙する以外有効ではないのだ と言わんばかりの倒錯絵が永く(今も)繰り返される事実に、疲れ果て語ることを断念した。そのいずれもの位置を一通り潜って来た人々(諸先輩・諸同輩)が、時に当事者としての「共犯性」に苛まれ、時に思索者としての「安全地帯性」を恥じ、時に往還者としての「両義性」を呪い、他者に伝わる言葉を紡げなかった。それらのぬかるんだ泥土から、それでも歩を進めようとする人々を幾人も知っている。                                                                                                    だから、『簡単に「反スターリニズム」などと言うな!』とは思う。思うが、

それではスターリニズム(左翼用語を超えたスターリニズムを含め)は拡大・再生産されるばかりだ。細見氏が言う通り「伝わる言葉」を求めたい。それは、一義的には、あれこれの思想書でも歴史書でもなく、おそらく臓腑に届く「詩」に在るだろうと直感している。当事者・思索者・往還者の体験・構想・諦念を射抜いて届く言葉のことだ。そこで、届いて来る人間の声を聴き、ぼくらや若者が次に思想書や歴史書に向かうかも知れない。
金時鐘の行いと詩作こそは、その生きた実践という一面を持っていると思う。

                                                                                                                           

 

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