【思い出させる好漢=フィリップ・ノワレを夢で見た】

1948年に祖国チリを追われたパブロ・ネルーダが、イタリア・ナポリ湾の小島に亡命していた50年代の史実をベースにしたフィクション=映画『イル・ポスティーノ』(「The 郵便屋」かな)の一場面を夢で見た。
ネルーダは1958年に共産党再合法化で祖国へ帰り、1970年の大統領選挙で多くの団体・組織・市民から候補者に推されたが辞退し、3度目の挑戦となる社会党サルバトーレ・アジェンデが左派統一候補となり当選した。

アジェンデは1958年選挙で28,8%・3万票の僅差と善戦、64年選挙で39,9%まで得票を伸ばしたが、キリスト教民主同盟が右派と連合し敗北した。70年選挙は人民戦線方式に加え参加政党が拡大した「人民連合」が形成され、さらに中立宣言をした軍トップのシュナイダー将軍が右派に暗殺され、キリスト教民主同盟がアジェンデ支持に回り153対35の大差で勝利した。ネルーダはアジェンデ政権を支え、1971年にはノーベル文学賞を受賞。
1973年9月11日、ピノチェトらの軍部によるクーデターは暴虐を極め、逮捕・拘束・虐殺は運動家・労組・歌手芸能人・表現者・学者知識人に及び、ネルーダも家屋・蔵書を破壊され12日後9月23日病状悪化緊急搬送の果てに病院到着前に絶命した。
夢に見たのは、フィリップ・ノワレが演じたパブロ・ネルーダと、彼の前に立つポスティーノ(郵便配達者)マリオが海岸で会話するシーンだ。
島でただ一つの配達先ネルーダ家に、世界各地からやって来る郵便物を届けるポスティーノ。ネルーダとの出会い・会話・交流、珠玉の日々。58年祖国に帰って数年後ネルーダは島を訪れるがマリオはデモで亡くなっていた。
フィリップ・ノワレは下記の4本だけを観た。


『地下鉄のザジ』1960年
『フェラーラ物語』1987年
『ニュー・シネマ・パラダイス』1988年
『イル・ポスティーノ』1994年
静かにしかし深く根本的に社会が変容して行く大戦前夜。不寛容精神の蔓延、迫害・・・、青年に恋い焦がれるユダヤ人医師を演じた『フェラーラ物語』。
少年トト(サルヴァトーレ)に映画の醍醐味を伝えた『ニュー・シネマ・パラダイス』のフィリップ・ノワレ演じる映写技師アルフレードは、ワシら世代の者には「心当たり」ある心の「師」だ。
夢と希望と手に届く明日を示してくれた。
フリップ・ノワレ・・・、時々思い思い出させてくれる得難い役者だった。
(2006年11月没)