2012年の訃報.  また 得難い人たちが逝ってしまった。合掌。 

1月 林光(1931、80)  (カッコ内数字は、生年と没年齢)                                                                                                           セリフの無い映画、新藤兼人監督『裸の島』(1960)の音楽は、50年以上経った今も鮮烈に耳に残る。                                                               林さんの音楽に、敗戦時14歳・大人前少年の原風景が見え基調音が聞こえる、というのは変ですか?                                                                                2月 淡島千景(1924、87)                                                                                     元タカラジェンヌだそうです。何と言ってもオダサク=織田作之助『夫婦善哉』(1955)での森繁との絶妙の夫婦役です。淡路惠子さんら遺された後輩の言によれば、現実の交流では「兄貴みたいな存在」だったそうです。芸名の由来は「淡路島 かよふ千鳥の なく声に いく夜ね覚めぬ 須磨の関守」だし、スクリーン上では、決してそうは見せないこういう役者の値打ちは、ぼくならぼくの現実の交友関係でも得がたい女性なのだなぁ。                                                                                                                                  3 吉本隆明(1924、87)                                                                                               当ブログ2011年8月の記事: 『吉本隆明「反核異論」異論』 http://www.yasumaroh.com/?p=12371                                                                                 4月 安岡力也(1947、64)                                                                                                                                       父親がイタリア人、母親が日本人。そのハーフだったとは知りませんでした。祖父はシチリアン・マフィアだそうで・・・。  ぼくと同年生れ。それがどうした?・・・ですが、何か親近感あるんですな。                                                                                                    5月 新藤兼人(1912、100)                                                                                                                                               遺作『一枚のハガキ』(2011)を公開時に観ることが出来たのは幸い。大竹しのぶが最高でした。                                                        『清作の妻』(66年、脚本)などにも一貫して流れる、民の「生」(それも女性の)の側から「国家」「天皇」を射通す、臓腑に沁みついた反軍国・反国家主義の脈は生涯揺らぐことがなかった。                                                                                                                                                        等身大のゲバラを描いた『チェ28歳の革命』のベニチオ・デル・トロによるロング・インタヴュー(2011)を「日本映画専門チェンネル」で観た。映画を愛する者二人の圧巻のトーク番組だった。ベニチオが多く深く新藤作品を観ていたのには驚かされた。機会があれば観られたし(確か、50分前後の作品としてネットに在って、ダウンロード可のはず)。                                                                                                                6月 伊藤エミ(1941、71)                                                                                                                               ザ・ピーナッツの姉の方。沢田研二:ジュリーの元女房。ぼくは、ピーナッツには珍しく演歌調の『大阪の女(ひと)』が好きだと言っては笑われてます。「まるで私を責めるよに 北の新地に風が吹く」の替歌詞で唄うのですが、その自虐歌詞の内容は恥ずかしくて、ここではナイショです。ジュリーとの間に息子が居るのだそうだ。                                                                                 同月 地井武男(1942、70)                                                                                               ぼくの東京単身生活開始と相前後して始まった(2006・4~、テレビ朝日系)東京旧市街や各沿線案内の『ちい散歩』は、不規則な現場業務のぼくにとって時々観ることが出来た貴重な「東京案内」だった。                                                                                                                                        俳優座養成所へ第15期生として入所。同期には原田芳雄林隆三太地喜和子赤座美代子前田吟夏八木勲高橋長英竜崎勝秋野太作栗原小巻小野武彦村井国夫三田和代など錚々たるメンバーがいた。う~ん、スゴイ面子。                                                                                            8月 津島惠子(1926、86)                                                                                                                                                                                                                                      戦後第一期女優の一人かな・・・。ぼくにとっては、原節子・岸惠子・高峰秀子・久我美子らとともに「戦後」という語に付いて回る、実際には出遭ったことのない焼跡・闇市と、それを乗り越えた「知性」や「戦後女性」を象徴する顔なのだ、もちろん彼女たちの黄金期は知らない。『七人の侍』は、若武者:木村功が農村の娘(津島)を「たぶらかす(?)」のではなく、身分制度上の現実や結ばれること叶わぬ未来と村での烙印付き将来を度返しして、一瞬の「恋」の方を選択する村娘の力強い自立をこそ見たいと、友人(女性)が言って、妙に「なるほど・・・」と納得した記憶がある。                                                       その友人は、言葉に見合うその後を見事に生きている、と感じている。                                                                                                         同月 山本美香(1967、45)                                                                                                                                  ジャパンプレス所属。2003年イラク戦争時、バグダードから独自のレポートを送り続けた。本年、シリア内戦取材中、政府軍の銃撃に斃れる。戦場報道での殉職だ。父親も朝日の記者だったそうです。                                                                                        9月 アンディ・ウイリアムス(1927、84)                                                                                                                                             世界的にヒットした、映画『ティファニーで朝食を』の主題歌『ムーン・リバー』(61年)も、翌々年の『酒とバラの日々』も好きですな。                                                                                                                                              映画「ティファニー」を観たのは62年15歳の高校一年の時。オードリーさんへの先入観からかぼくが幼すぎたのか、ホリー(役名)を『ローマの休日』や『尼僧物語』の延長上で観ていた。映画でオードリーがベランダ前の窓際で歌う素人歌唱はホント良かったですな。いや、アンディの歌唱が世界に広げたんですが。                                                                                        10月 大滝秀治(1925、87)                                                                                                                                                                                                                                                                  滝沢修亡き後、大滝秀治が引き継いだという舞台、『炎の人ゴッホ』と『巨匠』。                                                     1944年、ナチス・ドイツ占領下ポーランド。ワルシャワ蜂起直後、鉄道爆破への報復を為そうと、小学校校舎に追い詰めたメンバーの中から、知識人を四人銃殺すると宣言して身分確認を始めるゲシュタポ。                                               簿記職の身分証明しか持たない歳老いた旅役者は、自分が俳優であることを証明するために台本なしで「マクベス」のモノローグ(ひとり言)を演じて見せ役者の矜持を示す。それはすなわち、死を選択することなのだが・・・。木下順二晩年の作:巨匠。 観たかったなぁ~~。                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                        滝沢修・宇野重吉・北林谷栄・大森義夫・芦田伸介・加藤嘉・清水将夫・下条正巳・下元勉・鈴木瑞穂・佐野浅夫・内藤武敏・米倉斉加年・奈良岡朋子・吉行和子・南風洋子・樫山文枝・日色ともえ・高田敏江・他、新劇史に名を刻む錚々たる面々が在籍した劇団民藝の、宇野亡き後の法人代表だったそうだ。                                                                                                                               近年の「つまらん!お前の話はつまらん!」(大日本除虫菊社の水性キンチョール?のコマーシャル)は、頑固で不器用だが、曲げることない信念を抱えて生きて来た老人の喜劇的「悲哀」を、数十秒の中で見事に表現していた。ぼく選「テレビCM」ベストワンです。あのCMに、新劇の歴史への矜持とおバカTVへの異論とを重ねると、テレビ界に対する「つまらん!お前の話はつまらん!」に聞こえるのだ。                                                                                                      http://www.youtube.com/watch?v=g0w_-e-caBw                                                                                                                                  11月  森光子(1920、92)                                                                                                    没直後の当ブログ記事 『森光子さんの「放浪記」』 :http://www.yasumaroh.com/?p=15790                                                                                                                                                                     12月  小沢昭一(1929、83)                                                                                                                                                                                                                                川島雄三『洲崎パラダイス赤信号』『幕末太陽傳』今村昌平』『エロ事師たちより・人類学入門』・・・、沢山観ましたが、浦山桐郎『青春の門』(1975、77)での蛇足的なナレーション(劇外人物として作者の分身として登場)役は不本意だったと思えてならない。浦山さん、悪いのですが、実際、興醒めでした。観客をもう少し信用してやって欲しい。                                                                                                                                                              小沢昭一・仲谷昇・加藤武・フランキー堺などは、旧制麻布中学の同窓。                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 地井武男の俳優座養成所、大滝秀治の民藝、小沢昭一の麻布中学・・・。なるほど、手塚治虫が中心に座る「ときわ荘」に、藤子不二男・赤塚不二夫・寺田ヒロオ・石の森章太郎らが吸い寄せられるように住み着き、刺激し合い育ち合ったように、旧制麻布中学には面白い面々が集って来る引力が在ったようだ。そうした磁場は確かにあるものだ。                                                                                                                                                        小沢は、各地に残る民衆芸能の研究でも知られ、レコード『日本の放浪芸』の製作、著作『ものがたり・芸能と社会』『小沢昭一的・流行歌昭和のこころ』などを出版。                                                                                           また「マスコミ九条の会」の呼びかけ人でもあった。各界にこういう人が少なくなって行くようだ。                                                                                       出でよ、継ぐ者たち。

 本年の教訓: いやぁ~、友は大切だ!

********************************************************************************************************************************************************

それではみなさん、本年も閲覧と辛口ご意見 有り難うございました。                                                                                                        来年は仕事を減らしてもらい、鈍ったカラダを鍛えることを兼ねて、少しは動きたいと思います。                                                                                                       世はホントの意味で「正念場」に差し掛かっています。猪瀬とは違うカタチの「全共闘のなれの果て」を示さんとアカンね、なぁ同輩!                                                                                      ワシらのマクベスを諳んじて見せようぜ。                                                                                                                      では、よいお年を(そう気楽に言えないのですが・・・)                                                                                       

2013年追記:                                                                                                                2012年12月30日 ベアテ・シロタ・ゴードン(1923、89)                                                                             両親がウクライナ系ユダヤ人の米国女性。GHQ民生局の一員。                                                     日本国憲法草案制定局に配属された、当時22歳。                                                              憲法24条=男女平等条項制定に尽力した。                                               ジェームス三木作『真珠の首飾り』など憲法成立史に詳しい。        

Leave a Reply

Search