歌遊泳(歌詞研究): 演歌の向こう側と「切れて」「繋がる」ために ②/5

演歌における多頻出「語」

過日、阿久悠・ジュリーに関する過去の文章を加筆修正して当ブログに掲載(http://www.yasumaroh.com/?p=5779)したところ、早速知人からお叱りを頂いた。                                                              曰く、『阿久悠が日本の歌謡にへばりつく「大衆的抒情」と訣別している、などとはとうてい思えない。阿久悠の現代・都会「演歌」には、同じものが「へばりついている」と思う。』  現代・都会「演歌」、うーん上手いこと言うねぇ。頭に「現代」や「都会」と付けたところで、「演歌」であることに変わりはないと言っている。それに関しては、全く同感だ。                                                                         ぼくが言いたいのは、阿久悠作詞に於ける挑戦、そして映像的であることによる「歌」の「抒情」「語」拘束からの仮解放である。                                                  http://www.youtube.com/watch?v=BNfs8dL0hjg  http://www.youtube.com/watch?v=hNZ4VvMaYt4&feature=related    http://www.youtube.com/watch?v=3AszYpnrpUE&NR=1                                       

過日ブログで取り上げた歌詞は次の通り。彼の「違う演歌」への挑みが、「切れて」「繋がる」映像が、垣間見えないか?                                                                             「身体の傷なら直せるけれど 心の痛手は癒せはしない」(『時の過ぎゆくままに』75年)、                                                          「思い出かき集め 鞄につめこむ気配がしてる」(『勝手にしやがれ』77年)、                                                            「傷つけ合うのが嫌いだからと ずるずるみんなを引きずって」(『憎みきれないろくでなし』77年)、                                                       「片手にピストル 心に花束 唇に火の酒 背中に人生を」(『サムライ』78年)、                                                                                                                                                   「あなたには帰る家がある やさしくつつむ人がいる」(『LOVE抱きしめたい』78年)、                                                                                                                    「男がピカピカの気障でいられた。ボギー、ボギーあんたの時代はよかった」(『カサブランカ・ダンディ』79年)。                                                                                                                                                                                                     

「大衆的抒情」の世界的一般性と「日本の」特性について考える為に、昨09年作った、歌謡曲に登場する「語」(名詞・動詞に限る)から特に多いものを探ったメモを添付する。歌謡曲は、これらの「語」の組合せによって作られてもいるが、それには理由がある。ぼくなりに気が付いたことを、次回ここに書くが、今日はまず、その一覧を見て欲しい。

【Uta-Net 歌詞検索】より

タイトルあるいは唄い出しに、その「語」が含まれる曲数の一覧。(09年7月筆者集計)

                                                                       

凡例: 例えば、語「時」なら、時代・時間・時・時に・時計、など「時」が含まれる「語」のすべてが該当。                                                                                        タイトルにも歌詞にもその「語」があれば、重複カウントされている。                                                            また、例えば、『なごり雪』なら「雪」、唄い出しの「汽車」「待つ」「君」「ぼく」「時(計)」、など全ての項目に重複カウントされている。                                                                                                                        狙い: 実際『なごり雪』は、後の歌詞も「季節」「最後」「呟く」「春」「窓」「唇」「さよなら」「ホーム」など、下記の多頻出「語」のオンパレード構成となっていて苦笑する。『なごり雪』こそは「演歌の王道」を歩んでいるのだ。                                                                                     高齢者には「ニュウ」ミュージックでもあるこの歌は、昔も今も老若男女に受け容れられ支持され続けている。もちろん、メロディーの美しさが大きな要素だが、ぼくらに刷り込まれた「語」感と、そこをくすぐる「演歌の王道」を行く歌詞とは響き合い抱擁し合うのだ。「言葉」化されることを待っているぼくらの大衆的抒情と、「語」の側の時代を超え時間を経て培われた吸引力は、決して侮れない。世とぼくら自身に沁み付いている。それを検証もなく「琴線」などと持ち上げて呼ぶ論者がいるなら、いかがわしい限りだ。素朴で無垢な、そのままではいか様にも弄ばれる危うい情感、まさに大衆的抒情の核心ではないだろうか? 国家・郷土・戦争・教義・党・日本の企業風土・・・、回収先はいくらでもある。                                                                                                     ところで、下の表は、歌のジャンルを一切問わないので、数は盛り場歌謡に影響されたりもしているが、それらは、おんなと男の立派な艶歌です。                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                      全体でのベスト9は、①君・あなた・お前 ②時 ③夜 ④空 ⑤愛 ⑥風 ⑦恋 ⑧花 ⑨夢 である。その理由、そして各欄の最多「語」の理由、そこを探り歌謡曲に於ける大衆的抒情の在処を考える糸口としたい。他に、種類が多くて正確なカウントができなかったが、「生物」という項目を作れば花:約3800、木・樹:約950、鳥:約900である。また、モノ名詞・情感・想念・抽象の「語」、動詞、人の心の動き、などで記載できなかったものは多数ある、ご容赦。                                                                          「ひとり」1019、「ふたり」534、「水」675、「森」263、「火」523、「炎」192、、「音」1001、「鐘」105、「影」632、「群」166、                                                            「都会」249、「詩」257、「香・匂」479、「乱」188、「流」1428(時間含)、「消」655、「終」1170、、「過ぎ(る)(て)」602、                                               「追」529、「逃」247、「回」360、「飛」846、「咲」845、「散」468、「踊」422、「落」696、「崩」51、「堕」57、「迷」429、                                             「惑」179、「発」180、「起」254、「鳴」473、「燃」281、「憧」117、などが、いい歌詞の中にあるのですが・・・

                                                                                                          中島みゆき歌が「演歌」だと断ずる人の言い分は、おそらく、それが下記の表の多頻出「語」の組合せという                                                                       「演歌の王道」の枠内にあるという確信に拠っているのだろう。                                                                                                          ぼくは、「演歌主義者」なので、それがどうした?という立場だ。                                                           歌は、すべからく演歌なのだ。  艶歌・怨歌・厭歌・縁歌・宴歌・焔歌・援歌・演歌、だ!                                                                                 問題は、自身に棲む「大衆的抒情」「センチメンタリズム」「土着的浪漫」との「訣別」と、それらへの回帰ではない「復権」。                                                                                          「切れて」「繋がる」。そこなのだ。                                                                                                                                                         

        区分                                           語(名詞・動詞)、曲数             寸評
季節 春1415、1763、秋438、冬588、季節657、 夏を好むが、熱・暑ではないんです。わかります。
気候 暖117、熱・暑155、涼・爽39、寒・凍256
気象現象、自然 雨3078、4095、雪1178、霧335、雲776、嵐213、波791、晴554、光・輝1981、闇583、 雨ではなく「風」か
地理的場所等 海1892、浜294、川・河916、2091、山538、岬155、島321、丘・坂652、草(草原)975、 草、意外に多いですね
時間帯 夜明け434、朝1537、午後274、夕・夕日・夕暮486、たそがれ177、暮756、5238 歴史は夜作られる?
人的時間① 2433、命635、死379、人生478、若・青年397、少年290、少女・乙女305、子供261、  
  〃  ② 5319、昔・過去410、最後439、現在・いま812、未来531、明日933、昨日388、初571、 時・時間・時代。
行動・動作・伝達 旅1049、走・駆955、泳110、1253、卒業128、遊255、休206、疲273、眠・寝1228、              話935、告206、語508、叫178、呼554、囁・呟134、伝404、149314901492、                     人は本来、歩く。眠る。
最後は、泣いて笑って歌うのか
社会性・共同性 仕事・働261、祭165、闘・抗・集・絆368、村59、世1653、2505(共同性なのかどうか)、 働・闘が歌になりにくいのは解る
人工的場所 駅・ホーム787、港398、空港18、校舎・学校・教室183、窓430、扉228、ビル178、 やはり駅か。別のホームも混入
天体 星2035、月2328、太陽868、4182、宇宙231 空、多いんですね
乗り物 汽車・列車389、517、バス254、飛行機75、車1031(クルマではなく車全て)、 汽車よりも船か・・・
人称 私・ぼく・俺1925、君・あなた・お前10618、我々・我ら・ぼくら・仲間695 そりゃそうでしょう
情感 喜113、怒・恨193、哀・悲1152、苦202、傷・痛765、楽473、涙・泪1839 泪には全て含まれるもんね
想念 故郷・ふるさと364、希・願587、3375、心2349、思い出535、忘1013、諦142、欲243、                                                                           酒・酔885、遠655、帰る770、待つ989、棄・捨259、切れる・果てる・絶える・離2657 夢。 人は、これなしでは生きられないのだと思う。
男女 男1155、女2376、出会(逢)438、抱1116、惚161、別・さよなら2258、恋3916、4138 さよなら(だけが)、恋、愛
婚姻・血縁 妻・女房2372、夫・だんな11、夫婦・めおと73、母・おふくろ276、父132、 当然でしょうな。
身体 顔1168、目1876、口・唇765、声939、耳245、腕203、2494、指611、爪107、背中345 手が最多とは・・・

 

                                                                                                                              

3 Responses to “歌遊泳(歌詞研究): 演歌の向こう側と「切れて」「繋がる」ために ②/5”

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